新月まだ酔い醒めぬ頃


[06]上弦に、日は沈む。


新しい袋から取り出した。

飴。


彼女の手のひらに乗せる。

『ありがと。』


変わらない、細い声。


思い切って話してみる。


『あの、お名前は?』

『・・・・・』

無反応。


『ごめんなさい。
じゃあ、お年は?』




『・・・・・十七。』



『本当に?
じぁ、僕と同い年だよ。』



『そうなんだ、・・・・』



つれない会話。
凍る様な空気が流れる。



『元気。・・・ないよね・・・・
良かった、友達に・・・』




『もうすぐ、
死ぬかも知れないのに
友達になれる訳ないじゃん。!!!』



細く、大きい声は
病室に響いた。


『ごめん。・・』



『謝らなくても良いよ。別に。』


可愛い顔の裏腹には、
結構気は強い子だった。


『ねぇ。・・』


彼女の方から話しかけて来た。


『死ぬのって怖いのかな?』



いきなり、深い質問だ。



『怖いよ。すごく、・・・・
・・・・僕だっていつ死ぬか
分からないんだ。』



『えっ、・・・・』


驚いた中に怯える表情の彼女。



『僕は、もう助からないんだ。
末期の肺ガンでね。』



『な、・・何で・・?』


まだ、怯えている彼女。


『煙草にね、二年間吸っただけで、
やられちゃった。・・・・』





『煙草・・・まだ未成年なのに、・・
親不孝ね。』




『両親は知らないよ。
生まれてからずっと施設。・・・
てか、
君はまだ死ぬって
決まってないでしょ。
何でそんな事聞くの?。』



彼女はふっと視線を逸した。



『そう簡単にいく訳ないよ。
心臓なんて・・・・。』




『両親や親戚の人は?』




『私も施設。ずっとね。・・・・』




やっぱり、
似ている運命だな僕らは、・・・・・
そう思った。




二日目の夜が来た。

月は新月。

黒い闇を乗せて。




続く。



by しょういた つき。


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