第41章


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「……おい、ガキ。こちとらオメーを絶体絶命の危機から救ってやったんだ。少しぐらい感謝して、協力しやがれってんだ」
 湧き上がる苛立ちを足爪で土を握り穿って堪えながら、あっしは再度凄む。
「なんだよ、おまえなんて、口からモワモワ変なの出してただけで、殆ど役に立ってなかっただろ。なのにエラソーだぞ、オッサン」
「オッサ……!?」
 堪忍袋の緒が切れる間もなく散り散りに弾け飛び、びきびきと額に青筋が走っていくのを感じる。兼ねてより老け顔気味だと
同僚だった奴らにもからかわれ、気にしていたあっしにとって、その言葉は決して触れてはいけない、特大の地雷だった。
「こんのクソガキャ、ほぼ終わり掛けとはいえ、まだ青春時代を生きているぴちぴちの俺様をつかまえて、オッサンだと!?」
「ふん、どっからどう見てもむさいオッサンにしか見えないぞ。オレがクソガキなら、おまえはクソガラスだな、オッサン」
 言って子ニューラはは、べーっと舌を出した。怒り狂って追おうとするが、子ニューラはひょいとマフラー野郎の陰に隠れて盾にし、
マフラー野郎もまあまあと手であっしを制した。
「馬鹿だね、ガキと本気になった言い争ってどうすんだい……。アタシに任せな」
 背後でニャルマーが呆れたようにぼそりと呟く。舌打ちと共にあっしは引き下がり、ニャルマーに任せる。
「あのね、コリンクも私達の大事な仲間なの。だから、教えてくれないかな……?」
 少女のような声色で少し誘惑するようにしてニャルマーが頼み込む。その様子をマフラー野郎の後ろから子ニューラは
怪訝そうに見やった後、何やら近付いてくんくんと鼻を鳴らしだした。
「おまえ……結構、いい年だろ」
「なっ!?」
 子ニューラの言葉に、ニャルマーは仰け反りそうなほどびくりとして飛び退いた。
「獲物の鮮度は匂いでわかるぞ。オレ知ってるもんね、そーいうの年増の若作りっていうんだよな」
 ニャルマーの心に被せていた仮面に、ぴしりとヒビが入る音がここまで聞こえてきたような気がした。
「こんのクソガキャ、ほぼ過ぎ去ったとはいえ、まだ青春時代にしがみ付いているぴちぴちのアタシをつかまえて――」
「結局、俺様と同じ末路じゃねーか……」

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