第41章


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 まだ幼いというのもあるのかもしれないが、ニューラ族の恐ろしげな噂から抱いていた印象とは随分とかけ離れた、
陽気でかしましいガキだ。マフラー野郎の言っていた通り、その種族というだけで偏見を持ってはいけないということか。
「――それから、それから、その紫風船とドロドロしたヤツもババッとやっつけちゃって、とうとう黒服どもは親父の強さに
びびって逃げちゃってさ!」
 すっかりと心を許した様子で子ニューラはぺらぺらと喋り続け、マフラー野郎も嫌な顔一つせずににこにこと聞き続けた。
敵対する者には容赦なく接するこいつも、子どもに対してはどうにも甘い。ここらで誰かが止めておかないと、
延々と日が暮れるまで話を続けそうな勢いだ。
「んで、そのご立派なお父様方はどこに行ったのかいい加減聞かせてくれねえか?」
 そろそろ本題に入らせようと仕方なくあっしは口を挟む。
「ねえ、トラックにはコリンク――あなたぐらいの青い山猫の子も乗せられていたと思うんだけど、何か知らないかな?」
 待ちかねていた様子でニャルマーも猫を被った態度で横から加わった。
「ん、なんだよいい所なのに……なあ、そういえばこいつら何だ?」
 子ニューラは話を遮られて少し不機嫌そうにしながら、マフラー野郎に尋ねる。
「ああ、紹介がまだだったな。この二匹は、ヤミカラスとニャルマー。俺の仲間みたいなものかな」
 ふーん、とまだ警戒した目つきで子ニューラはあっしとニャルマーをじとりと見やった。
「ま、そういうわけだ。つーわけで、さっさと質問に答えな。こんな所でぼやぼやしている程、俺様達は暇じゃねえんだよ」
 ぐい、とあっしは子ニューラを睨み返し、強い調子で言った。ニューラ族とはいえこんな可愛げ残るガキなんて、
少し脅してやりゃちょちょいだろう。だが、子ニューラにまるで怯む気配は無く、尚強情にむっとして視線を尖らせた。
「やだ」


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