第41章


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 頼みのリーダー格をやられてしまったイトマル達は途端にうろたえて騒ぎ出す。
「去れ!」
 放電と共にマフラー野郎が一喝すると、イトマル達は飛び上がりそうになるほど慄いて、
慌てて倒れているアリアドスを糸で包むと、数匹がかりで引き摺って逃げていった。
 マフラー野郎はふう、と安堵の息をつく。あっしも疲労感に気抜けした息を漏らした。
「まったく、冷や冷やさせるよ」
 言って、ニャルマーが駆け寄ってくる。
「カラスの奴が突然不気味な煙を吐き続けて止まらなくなっちまった時はどうなるかと思ったけど、
何とかなったみたいじゃないのさ。結局なんだったんだい、あれ」
 まるで自分は関わっていなかったようにニャルマーは白々しく尋ねる。
「うん、あれは黒い霧って技だと思う。俺達ポケモンの技にはあの蜘蛛達みたいに糸で相手の動きを
鈍らせて弱らせたりするものや、自分に気合を込めて更なる力を引き出したりするものがあるんだけれど、
そういった技の効果を全部掻き消してしまう力があの霧にはあるんだ」
 マフラーとチビ助にこびり付いている糸を丁寧に取ってやりながら、マフラー野郎は答えた。
「へえ、中々便利そうだねえ……」
 何の気なさそうにニャルマーは言いながらも、何か企んだようにそっとほくそ笑んだのをあっしは見逃さなかった。
「っと、そういえば、あのニューラの子はどこに?」
 きょろきょろと辺りを探すと、樹の上で顔を覆うように蹲って震えている子ニューラの姿をすぐに見つけることが出来た。


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