第41章


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「アタシらも加勢しなくていいのかねえ?」
 はらはらとニャルマーはあっしに尋ねた。
「あれじゃ手の出しようがねえだろ。下手に近づきゃ俺様達も危ねえ――のわッ!」
 電撃の流れ弾をすんでの所で藪に潜ってかわし、あっしは叫ぶ。マフラー野郎を中心に、
まるで稲妻の嵐のように電流は縦横無尽に荒れ狂ってイトマル達を薙ぎ払った。
だが、失神さえすれど、死に至るほどの致命傷を受ける者は一匹もいないようだ。
 何匹も同胞を蹴散らされ、これは手に負えないと見るや、イトマル達は一歩退き、
ぎぃぎぃと鳴き声を上げ始める。降参だとでも言うのだろうか、マフラー野郎も一旦電流を収め、
注意深く様子を窺う。
 電撃が収まっても、イトマル達は依然として鳴き声を上げ続けた。もしや、これは降参の意などでは無く、
別の意図があるのではないか。そんな風に考えていた矢先、周囲の木々の枝葉が音を立てて揺れ出し、
何か大きな影がイトマルの群れに降り立った。それは、俺達の身の丈二倍はありそうな、
サイケデリックな赤と黒の縞模様をした大蜘蛛――アリアドスだった。
 アリアドスは紫と黄色の縞というこれまた不気味な色合いの細長い前足を振り上げ、
金切り声のような甲高く耳障りな威嚇の声をマフラー野郎に向かって上げる。
 マフラー野郎は頬から電流を迸らせながら、そっと右手をアリアドスに向けようとした。
しかし、突然その右手はあたかも見えない釣り糸にでも引っ張られたかのようにびんと上に引っ張られ、
そのまま体ごとマフラー野郎は宙へと持ち上げられた。


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