第41章


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 もう少し確固とした手がかりとなるものが手に入りでもしないと埒が明かねえ。そんな先の見えない
聞き込みに疲れ、一旦小休止に入ろうとしていた時だった。
「ヒャーンッ!?」――まだ幼い猫ポケモンらしきものの悲鳴が、森の奥から響いてくる。
まさか、コリンクだろうか。あっしらは顔を見合わせて頷き、一斉に悲鳴が聞こえた方へと駆け出した。
 悲鳴の先にいたものは毒々しい緑色をした蜘蛛型のポケモン、イトマルの群れ。その中心で、
奴らの吐いた白い糸に捕まっているのは青い山猫の子ども……ではなく、片方だけ耳が赤い、
真っ黒い毛並みの猫――ニューラだった。あっしが話に聞いていたよりもその体はずっと小さく、
端々に幼さが残っている。まだ子どものニューラなのだろう。
「い、イヤだ! くるな、くるなー!」
 全身の毛をおぞ気立たせながら、子ニューラはイトマル達から逃れようともがいている。が、その足はすっかり
粘つく糸によって捉えられていた。じわじわとイトマル達は、子ニューラへと群がろうと詰め寄っていく。
 群れからはぐれでもしたのか、何でこんな所で子ニューラが一匹で捕まってやがるのかはわからねえが、
とにかくこれはチャンスだ。あいつを無事に助けられれば、巣穴の場所を聞き出せるかも知れねえ。
「なあ、あいつを助けりゃ――」
 あっしが言い出して終えるよりずっと早く、マフラー野郎は血相を変えてイトマルの群れに向かって
飛び出して行った。――言うまでも無かったか。あっしは頭をばさばさと掻く。
 アジトの時から薄々気付いていたが、あいつはことに子どもの危機に関しては遮二無二になって助けようとする。
きっとイトマルに捕まっていたのが今回の件とはまるで関係の無いそこらのガキだったとしても、
同じように飛び出して行っただろう。その様は、どこか執着や執念めいたものさえ感じた。


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