第41章


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 その昔まではニューラはジョウトでは北東の辺境、シロガネ山脈とフスベシティの付近で時折姿が
確認されるくらいだった。しかし、今やその活動範囲をコガネからキキョウシティの付近にまで活発に広げ、
実際に襲撃事件まで起こしている。奴らが襲うのは、殆どが後ろ暗い積荷を載せている車ばかりだった。
義賊気取りなのか、それともワケありの荷物を運んでいるような人間は、例え略奪されても自分達の
やっている薄汚いことまで白日の下に晒される事を恐れ、声高に助けを求めることなんて出来やしないことを
狡猾に見抜いてやがるのかはわからねえが、とにかく団員共は随分とニューラ達には悩まされているようだった。
「シンオウにもあの黒猫共は生息しているから奴らの事は知っているよ。姿形は一見して小奇麗な奴らだけど、
本性はその毛並みの色の如くドス黒く残忍さ。奴らのえげつない鉤爪に比べたら、アタシの爪なんて
紙切りナイフみたいなもんだよ」
 ニャルマーの言うように、奴らの鉤爪は非常に鋭く恐ろしい武器だ。少し掠めるように爪先を
引っ掛けられただけで、碌に身を守る体毛も堅い鱗も無い人間では大怪我しちまうだろう。
そんな爪を持つ奴らが何匹も、それも連携の取れた動きで容赦なく襲ってきやがるなんて、
脅威以外の何者でもない。
 その中でも特に恐れられていたのが、ニューラ達が活発化し始めたのとほぼ同時期に現れるようになった、
異形のニューラの存在だった。『奴が現れたら積荷か命を諦めろ。もし奴の機嫌が悪けりゃ両方だ』
そんな風に囁かれていた。
 普通、ニューラってのは片耳だけが赤色をしていて長いんだが、そいつは両耳が赤くなっていて、
頭には大きな扇状の赤い鬣が広がっているそうだ。鉤爪はより鋭く研ぎ澄まされて、二本爪から三本爪へと変貌し、
体捌きはより敏捷だという話だった。

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