第41章


[77]


 まるで機械仕掛けのイノムーみてえなパワーでもってトラックは豪快に藪を無理矢理切り開いて
突き進んでいたようだが、その猛進もどうやら長くは続かなかったらしい。タイヤ跡が途切れた先にあったものは、
こちらに腹を向けて無残に横転したトラックの姿だった。あっしらはすぐさま駆け寄って様子を確認する。
だが、既にトラックは運転席も、覆いが剥がれて覗いている積荷の檻の中身も、もぬけの殻だった。
 車体には二本の鋭い爪で引っ掻いたような二本傷がそこら中に刻まれ、タイヤの一つに――季節は秋の
中頃ぐらいだったから、雪も降る筈がないって言うのに――どういうわけか溶け掛けた氷の塊が挟まりこんでいた。
「一体、何があったっていうんだい……」
 呆然とニャルマーは立ち尽くして、変わり果てたトラックを眺める。
「この無数の二本傷、木々にぶつかって出来たであろうものとは明らかに違うね」
 車体の不自然な傷をマフラー野郎は触れて調べる。背のチビ助も目をぱちくりさせてトラックを見回していた。
「こりゃ、奴らの仕業かもしれねえ」
 あっしはその犯人に大体の察しがついていた。
「何か心当たりがあるのか?」
 真剣な面持ちでマフラー野郎が問う。
「ああ、団員や元同僚のポケモン共づてに聞いた話だが――」
 近頃、ジョウトではこうした襲撃が度々起こっていた。襲撃者の正体は、徒党を組んだニューラ達――
二足で歩く黒猫みたいな奴らだ。元々、集団による狩りが得意な奴らではあったが、人間に対しては時々こそ泥を
働くことはあっても、車両を襲うような大それた事はしなかった。だが、ここ数年になって奴らは変わった。



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.