第41章


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 鉄橋沿いのあまり整備の行き届いていない道路へとあっしらは差し掛かり、剥き出しの地面に
残されたまだ新しいタイヤの跡を見つける。きっと例の怪しいトラックが残していったものに違いねえと、
あっしらはその後をつけてみることにした。地面に注意を向けながらしばらく進んでいると、
途中でタイヤ跡はスリップでもしたかのようにグネグネと曲がりくねって、道路を外れた藪の中へと突っ込み、
細い木々を強引に薙ぎ倒しながら進んでいったようだ。
「なんだか随分と焦っていたみたいだね」
 苦笑めいてマフラー野郎が言った。
「……妙だな」
 その横で、あっしはその痕跡に違和感を覚えて呟く。
「どうしたんだい?」
「ああ、サツ共に追われでもしている時ならともかく、大事な商品を輸送している最中だってのに、
こんな荒っぽい運転をするなんてありえねえと思ってよ。いくら悪の組織だろうと取引に関しちゃあ
最低限の信用ってもんがねえとやっていけねえ。余程の事がねえ限り、届けなきゃなんねえ商品に傷を
つけるような真似は避けるはずなんだが」
「つまり、その余程の事があった可能性が高いってことじゃないか。アイツに何かあったらアタシゃ……」
 ニャルマーの顔と言葉に焦慮が滲む。こいつの魂胆の一端を以前に垣間見たあっしにとっては、
この態度もあのコリンクってガキ自体を純粋に心配しているというよりも、アイツに何かあった後で自分自身に
降り掛かってくる不利益を厭んでいるように思えた。
「急ぐぞ」
 表情を少し強張らせ、マフラー野郎は先んじて木々が折られタイヤ跡が続く藪の中へと向かっていった。


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