第41章


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「それじゃあ全員無事みたいだし、またコリンクの行方を追おう。あまりもたもたもしていられない」
「ああ。確かあの怪しげなトラックが走っていたのは鉄橋の側だったねえ。とりあえず、ここからも見える
あの鉄橋の一部を目指してみようじゃないか」
 マフラー野郎とニャルマーが算段を立て始め、早速出発しようとしている。あっしはそんな二匹の背を、
立ち止まったまま眺めた。
「どうした、ヤミカラス?」
 あっしの様子に気付いたマフラー野郎が振り返る。
「……ああ、そういえば、元々君の目的は奴らの手から逃れることだけだったものな。
これ以上は無理に付き合う必要もないか。短い間だったが協力してくれてありがとう。達者でな、ヤミカラス」
 ふっと仕方なさそうに笑みを浮かべ、マフラー野郎は再び歩き出した。
 あっしは少し迷っていた。確かに元々のあっしの目的はロケット団から無事に逃げ出すことで、
ろくに関わりのねえガキがどうなろうと本来ならば知ったこっちゃねえ事だ。 こいつらの後をついて行くよりも、
あっし一羽だけで逃げた方がよっぽど安全無事に逃げ切られる可能性が高いかも知れねえ。だが――
「勝手に決め付けてんじゃねえ。これから追っ手が来ねえとは限らねえんだ。まだ完全にロケット団共の手から
逃れられたとは言えねえ。協力して無事に安全な所まで逃げ切らせるってのが、てめえを檻から出してやる条件
だったはずだ。ちゃんとそれが果たされるまで俺様は意地でも離れねえぞ」
 照れ臭え話だが、こいつらはあっしにとって初めてできた仲間と呼んでもいい存在だ。
例え危ない目にあおうとも、まだこいつらと一緒にいきてえ。その思いが勝った。
「そうか。……ありがとな、ヤミカラス」 
 本心を見透かしたように、そっとマフラー野郎は礼を言う。
「別に何も感謝するところじゃねえだろ。単なる利害の一致だ」
 気恥ずかしくなって目を背け、あっしは毒づいた。


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