第41章


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「無茶苦茶させがって。どうにか生きてるなんて不思議なくれえだ。最高の初飛行と初墜落だったぜ」
 皮肉をたっぷり込めた口調であっしは言う。
「確かに今回ばかりは俺もちょっと焦ったかな。少し昔を思い出したよ」
「ケッ、背中の傷もその昔とやらからこんな風に無茶ばかりしてきた結果か?」
 あっしの言葉を受け、虚を衝かれた様子でマフラー野郎は首元と背中を手で探ってから、木にぶら下がって
脱げているマフラーを見上げ、「あちゃー」と気恥ずかしそうにマフラー野郎は頬をぽりぽりと掻いた。
「はは、見られちゃったか。この傷は――罪と、然るべき罰ってところさ」
 呟くようにマフラー野郎は言う。瞬間、その顔には少し暗い影が落ちたように見えた。
「ああ?」
 意味を汲めずあっしは首を傾げる。
「ひゃ! ちょ、ちょっと! なんだいこれ!」
 木の上から、ニャルマーの悲鳴が響いてくる。どうやら目を覚ましたようだ。
「おっと、それより今は早くお嬢さんとチビ助をおろしてあげないと。手伝ってくれるかい、ヤミカラス」
 誤魔化すように話を切り上げ、マフラー野郎は木の下へと急いだ。

「やれやれ、酷い目にあったよ……」
 地上に下ろされ、毛についた葉っぱや小枝を払いながらニャルマーはぼやく。
「やあ、悪い悪い。もうちょっと余裕があればもっと安全に降り立つ方法も用意できたんだが、
いかんせんその猶予は無かったからね。どこか痛むところはない?」
 チビを背負ってマフラーを巻きなおしながら、マフラー野郎は尋ねた。
「平気さ。すぐにでも行けるよ」
 手足をふるふると振るって、ニャルマーは答える。



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