第41章


[64]


「あ?」
 マフラー野郎が唐突にあっしに話を振る。まったくの寝耳に水だ。そんなもん、あっしはまったく知らねえ。
「プランB? 初耳だね。何か他にも事前に立てた作戦があったのかい?」
 ニャルマーがあっしに期待の目を向ける。しかし、あっしはぶんぶんと首を横に振るうしかなかった。
「ねぇよ、んなもん! 俺様だってまるで何も聞いちゃいねぇぞ、どういうつもりだ!」
 あっしはマフラー野郎に詰め寄る。
「当然だよ。言ってなかったんだから。この作戦は君の存在が重要だ、ヤミカラス。まずは団員達から逃げつつ、
とりあえず最上階を目指そうか」
 悪気無くにこやかに答えながら、マフラー野郎は階段を指し示した。
 こいつという奴は……いつも重要なことを直前まで黙ってやがって……!
 だが、文句を言うのは無事に逃げ切れた後だ。今は団員共が迫ってきている。あっしは怒りをぐっと飲み込み、渋々頷く。
「ま、アタシは無事に脱出さえ出来りゃなんでもいいけど……。苦労してるねえ、アンタ」
 ニャルマーは呆れ、同情するようにあっしに囁いた。

「それじゃあ、一気に駆け抜ける。立ち止まるなよ!」
 マフラー野郎の号令であっしらは一斉に階段を目指して駆け出した。団員達の怒号と一般人達の驚きの悲鳴を背に浴びながら、
マフラー野郎達は人間と人間の合間を縫うように駆け抜け、あっしはその頭上を飛んで越えていく。
 それにしても、奴が言っていた、あっしが重要で、最上階を目指す必要がある作戦――何だかとても嫌な予感がする。


[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.