第41章


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 真下に人間がいないタイミングを見計らい、マフラー野郎は格子を蹴り落としてそのまま飛び降りる。
あっしとニャルマーもすぐさまその後を追って降り立った。直後、周囲から人間達のどよめき声が上がり、
視線が一斉にあっしらの方に集まる。
「ど、どっちに逃げりゃあいい?」
 マフラー野郎を横目で見やり、あっしはぎこちなく問う。
「シッ、まだ下手に動かない。じっとしていれば、普通の人達の方はしばらくは大丈夫さ。逃げ出すのは、
出口へのルートと、待ち構えている団員がいないかをしっかり確認してからだ」
 マフラー野郎は冷静に周囲に視線を走らせながら言った。確かにこいつの言うとおり、
殆どの人間達はあっしらを遠巻きにしてざわめくばかりで、今のところ何かしてくるような気配は無い。
しかし、その後ろから数人、人垣を強引に押し退けながらこっちに向かってこようとする奴らの姿があった。
全員共通して、目立たない地味な色の長いコートに身を包んでいる。
「あからさまな格好だね。それにしても思っていたよりも、奴らの動きが早いな。この分だと、既に正面の出入り口はあんな風に
変装してる奴らが待ち構えて封鎖しているかもしれない。そうなるとその横を全員無事にすり抜けていくってのは難しいな……」
「じゃあ、どうすんのさ。あの青いゲス野郎の時みたいに、戦って倒していくっていうのかい?」
 焦った様子でニャルマーは言った。
「それはちょっと厳しいかな。一般の人達を巻き込みたくはないしね。うーん、仕方ない。ここはプランBで行こうか、ヤミカラス?」



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