第41章


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「いやはや、チビ助のおかげでちょっとひやひやしたけれど、なんとかなったよ。さあ、次は君達の番だ……」
 流石に少し疲れたのか、マフラー野郎は壁面に手をついて寄りかかり、俺達に背を向けたまま言った。
その途端に、マフラーの中からひょこりとピチューが顔を覗かせる。どうやら間一髪だったようだ。
あっしらの気苦労なんてまるで知らず、チビはふてぶてしいジト目でぼんやりとこちらに振り返る。
まったく、のんきな奴だ。それとも、マフラー野郎の背は、絶対的に安全な場所だと確信しているのだろうか。
ガキってのは、そういうのには特に敏感な生き物だからな。
 ま、何にせよとりあえずの危機は脱した。後はニャルマーの奴がしくじらねえのを祈るだけだな。
 だが、あっしの安堵はまたしても長くは続かなかった。チビ助のやつが、自分の直ぐ目の前にある、
妙な黒くて小さな機械――センサー装置をまるで楽しい玩具でも見つけたかのような目つきで、
興味深そうにしげしげと見つめていた。
「お、おい、まさか、やめ――」
「ちょ、ちょっとアンタ、それは駄――」
 あっしとニャルマーが制止するより早く、チビはマフラーから体を乗り出して手を伸ばし、ぺたりとセンサーに触れた。
「あ……」
「う……」
「え?」
 凍りついたように固まるあっしらに、怪訝そうにマフラー野郎が肩越しに振り返る。ダクトの外から鳴り響いてくる警報。
チビは悪びれた様子も無くきょとんと首を傾げる。すぐに状況を理解したのか、マフラー野郎は苦笑いを浮かべた。
「は、はは、ウチの子がごめんな。……君達、思い切り走る準備はいいかな?」
「こ、この、馬鹿野郎!」

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