第39章


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 後はもう人間の知識に縋るしかないと、洋館に残されている本をトバリに関するものに絞って漁ってみても結果はほぼ同様で、遂に行き当たったのが先程まで読んでいたシンオウ神話のトバリの項だ。神話や伝説など、
大部分が人間の考えた空想の話であるとロズレイドも思っている。
例え事実が紛れていたとしてもそれは元が分からない程に大きく装飾され、熱に浮かされた妄言のように不確かなものと化しているだろう。
 ただ物語として読むには面白いけれど、そこから真実だけを抽出して必要な答えを導き出すなんて、僕じゃあ無理だ。
『生と死の混じる場所』、『清められたポケモンの骨が流れ着き、肉を付けて戻ってくる地』、泉と洞窟を示すらしき話も幾つか見受けていたが、徒らに不安を煽るだけだろうとミミロップには読み聞かせないでいた。
 ……今日はそろそろ休もう。ミミロップさんも起こさなきゃ。こんな所でこのまま寝たら、風邪を引いてしまう。
 ロズレイドが席を立とうとすると同時、ミミロップが机から飛び起きるように頭を上げた。
その顔にはじわりと汗が滲み、どこか怯えたような表情をしている。

「どうなさいました?」
「わ、分かんない。けど、急にすごく不安になって。今、何だかピカチュウがどこか、手の届かないところに行っちゃったような気がして。今もそうなんだけど、それとも違う、もっともっと遠い、二度と手の届かないような――」
 息を荒げ、震えながらミミロップは答える。直後に、食堂がみしみしと揺れた。
二匹は突然の地震にびくりと動きを止め、揺れ動く電球を見張る。

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