第39章


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「それが、嘘だよ。ピカチュウはずっと黙って、隠してた!ボクは知ってる……知っちゃたんだ。またすぐにボクは置いていかれるよ。それはピカチュウにだけじゃない。みんなみんな、絶対にボクより先にいなくなって、ずっとボクは独り取り残されるんだ!だってボクの体はピカチュウやみんなと違って、普通の体じゃない。アルセウスさんが、神が、ボクの中には眠ってるんだ」
 俺は返す言葉を見失った。知られてしまった。あまりに大きく残酷な、神と、ただのポケモンの差。
だが、考えぬよう、気付かぬように避けていた。
「もうよかろう。分かったはずだ」
 見かねた様子で触手を伸ばすギラティナを、パルキアは体をぶつけて引き離す。
「まだですよ。あなたには私の領域を散々に荒らしてくれた礼も済ませていないことですしね」
「邪魔をするな……!」
 ギラティナは組み付くパルキアを跳ね除け、どす黒い息吹を吹きつけた。
咄嗟にパルキアは目の前の空間を裂き、自分ではなく息吹を異空間に飛ばして防ぎにかかる。
だが、少し遅く、飲み込みきれなかった分が腕を僅かに掠り、白い腕甲の表面が爆ぜるように散って抉れた。
それでも少しも怯むことなく、パルキアは再びギラティナに向かっていく。その間際、俺に一瞬目配せをした。
 分かっている。いつかは向かい合わねばならないことだ。少し前倒しになっただけで、逃げはしない。

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