第38章


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 薄暗い木々のアーチを抜け、奥にそびえ立つ洋館の前でソリはゆっくりと止まった。
「さーて、お家にご到着だぜロゼちゃんよ」
 ひょい、とマニューラはソリから飛び降りて言う。すぐ後に続いてロズレイドも降り立ち、マニューラ達に振り向いた。
「皆さんわざわざ送っていただいて、何とお礼を言っていいか。本当にありがとうございました!」
 深々とロズレイドは礼をする。
「へっ、何を勘違いしてんだよ。オメーを送ったのなんてほんのついでさ」
 マニューラは不適に笑って言った。
 え?とロズレイドは不振気に顔を上げる。
「今、糞カラス共はトバリの方にしばらく出張ってて、洋館にはあのぼんやりしたゴースト以外誰も居ねえだろ」
 そんな話は聞いてはいたがそれがどうしたのだろうか、ロズレイドは首を傾げた。
「こんなチャンス逃すわけにはいかねー。なあ、テメーら」
 ニューラ達もニヤリと笑みを浮かべる。
 ますます首を傾げるロゼリアを置いて、マニューラは玄関へずかずかと歩んでいき、扉を乱暴に蹴り開けた。
「ヒャハー!かかれ、テメーら!」
 おう!ニューラ達は呼応し、一斉に洋館へとなだれ込んでいく。そして中から次々に食料の詰まった袋を運び出してはソリへと積み上げていった。
「ちょ、ちょっと!そんなことしたら――」
 ようやくマニューラ達の企みを理解し、止めようとする。
「五体満足の上に進化までさせて帰してやったんだ。特別ボーナスってやつさ、ヒャハハ!オメーも、ほら!」
 叫ぶロズレイドの口へ、マニューラは袋から取り出した木の実を一つ無理矢理押し込める。もがもが言いながら思わずロズレイドはそれを飲み込んでしまった。
「美味しかったかー?これでオメーも共犯だ。黙っておいた方が身のためだぜ、ククク」
「そ、そんなー」

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