第43章
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あっしはしばし絶句した。流石のニャルマーも、顔を引き攣らせ俯いている。
同じ人工的に造られた身の上でありながら、あっしのチンケな運命とはまるでケタ違いだ。
いくらロケット団が悪辣な連中とはいえ、命まで落とすような任務はそう滅多にあるもんじゃねえ。
だが、こいつは……常に死と隣り合わせの地獄の縁を、否応なしに歩かされてきたって訳だ……
マフラー野郎の黒い目に映る赤い炎が、まるで燃え盛る戦火のようにも見えた。
「そうやって生き延びていくうちに、いつしか敵軍の間で、俺はかなり名の知れた存在となった。
勿論、良い意味じゃなく、悪い意味で、だけどね。根も葉もない噂が、トサキントの尾ヒレのように
広がっていったもんさ。俺が歩いた後には草木一本残らないだとか、電撃で山を打ち砕いただとか、
たった一匹で重量級ポケモンの大群をなぎ倒し、不利な戦況を覆しただとか、
伝説の雷鳥、サンダーの化身だとか……」
「そ、そうなのか……?」
思わずあっしの声は裏返った。奴の身のこなしや機転、あの強力な電撃……
ホントにそんなモンが乗り移ってたとしても、ちっとも不思議はねえように思われた。
「まさか……そんな高貴なポケモンが、醜い争いになど加担する筈ないだろう?
でもまあ、他の事については、当たらずとも遠からず、って感じかもしれないな。
そのうちに、同胞のポケモン達ですら俺を怖れ、避けて通るようになった。
相手が赤ん坊だろうと年寄りだろうと、小型だろうと同族だろうと一切容赦はしない、
余りにも血も涙もない、冷酷無比、残虐非道な奴だと、散々陰口を叩かれた。
揚句、『黄色い悪魔』なんていう、有難くない渾名まで頂戴したぐらいさ」
そう言って肩を竦めるマフラー野郎の表情は、仏さんとまではいかなくとも、悪魔などとは
程遠いぐれえ穏やかだ。だが、ふとした瞬間に、深い闇のようなモンが滲み出るのだけは隠せねえ。
「けれど俺自身は、そんな噂など別段気にも留めなかった。殺らなければ、自分が殺られる――
ただそれだけの事が理解できないなど、何て愚かな連中なんだろう……そう思っていた」
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