第43章


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 この女、態度や言動からしてカタギじゃねえことは分かりきっていたが、
蓋を開けてみりゃ予想していたよりももっとひでえ黒さだ。あっしは絶句し、
コリンクの何も知らない純朴そうな笑顔がふと暗い夜空に見えた気がして、心の中で涙した。
ああ、きっとこんなこと知ったらアイツ、海より深えトラウマになるのは間違いねえ。
一生モンの雌不信になったっておかしくねえ。傍らから見てるあっしだってなりかけてる。
「おっと、これについちゃ煩わしい細かい事は言いっこなしさ。別に痛め付けたり、
取って食おうって分けじゃあない。寧ろ守り、支えてやっているくらいだ。
行く行くアイツはアタシに安全な暮らしを与えるようになり、アタシもまたアイツが求める
理想のアタシを与える――。持ちつ持たれつさ。誰しもが、アンタみたいに自力で自分の身を
容易く守れるような力を持っている訳じゃあないんだよ、ニイさん」
 顔を微かに顰めるマフラー野郎に、せせら笑うようにニャルマーは弁明する。
「ふーむ、思っていた以上に君は厄介そうだな、お嬢さん。コリンクに関して色々言いたいことは
山のようにあるけれど、今はやめておこうか。下手に暴いても彼を傷つけそうだし……難しいな」
 やれやれ、とマフラー野郎は溜息をついて嘆く。
「そうそう、今のアタシらは運命共同体。余計な不和は後回しにした方が賢いよ」
 くく、とニャルマーは意地悪く笑った。
「それに、アンタだって人のことをいえないんじゃないのかい?」
「え?」
 マフラー野郎が首を傾げると、ニャルマーはすやすやと寝入っているチビ助をちらりと横目で見やる。

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