第43章


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「ふん……ま、その生き方にも限界があってねえ。年老いて、誰からも見向きもされなくなっちまったら
仕舞いさ。母親の最期は、それはもう惨めなもんだった。置いていかれた悲しみよりも、人目を忍ぶように
辺境のこれまた隅の穴倉で冷たく転がっていた”それ”に、己の行く末が重なって見えた絶望感の方が勝ったよ。
アタシはあんな最期、ゴメンだ、絶対に。だから、アタシは何としても――」
 初めて見るような愁いを帯びた顔でニャルマーは最後に何か言い掛けるが、ハッと取り直して押しとどめる。
「フフン、聞いて後悔したかい? だから他人様の過去なんて気軽に根掘り葉掘り詮索するもんじゃあないのさ」
 誤魔化すようにニャルマーは普段の小憎らしい調子でからからと嘲った。
「じゃあ、あの山猫のガキ――コリンクの奴は一体どういうつもりで連れまわしてやがったんだ?
 強そうにも、大きな群れのリーダーにも見えねえが」
「あのまんまじゃあ、そうだけどね。あれからルクシオを経て、レントラーにまで成長すりゃあ中々のもんさ。
アイツはシンオウでまあまあの規模の群れを持ったレントラーのご子息様の一匹でねえ。その群れじゃあ、
獅子は我が子を千尋の谷に落とす――自分のガキ共を一匹ずつ武者修行に送り出して、無事に帰ってきた奴を
次代のリーダーとして育てるなんて古臭ーい風習をいまだに引き摺っていてんのさ。人間が大昔より更に
のさばり始めた昨今で、まったく無茶だよねえ。前々からその群れに目星を付けていたアタシゃ、
偶然、アイツが人間のトレーナーに捕まりそうになっているところに出くわして、こっそりと陰から
救ってやったわけさ。群れのリーダー、上手く行けば次期リーダーに近付くためのダシにするつもりでね。
途中までは上手くいってたが、ヘマしちまって人間、それもロケット団なんかに二匹揃って捕まっちまったもんだから、
大番狂わせの台無しさ」


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