第43章


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 飯も食い終わり、焚き火の暖かな火と光の傍、あっしは心の底からほっとする。
 空は黒一色に染まり、辺りはすっかり闇に沈み込んでいた。子ニューラはチビ助を枕にして
ぐーすかと寝息を立て、チビ助はその下でうんうんとうなされている。
マフラー野郎は仕方なさそうに苦笑して子ニューラを起こさないように慎重にチビ助の上からどけ、
解いたマフラーをそっと二匹に優しくかけてやった。
 ニャルマーの奴も顔を伏せ、体を丸めて寝入っているようだ。
「君も今日は色々あって疲れているだろう、ヤミカラス。ゆっくり休むといい。火の管理は俺が
やっておくからさ」
 余った小枝を火にくべながらマフラー野郎は言った。
 あっしは揺らめく炎を見つめ少し思い悩んだ後、意を決して口を開く。
「オメエってさ、今までどんな生き様をしてきやがったんだ? 軍隊に飼われてただとか、ネズミとは
思えねえ腕っ節とか、肝の据わり方とか、言い方はわりぃがマトモじゃねえ。そろそろ少しくれえ身の上を
話してくれてもいいんじゃねえか。こっちゃ何もわからねえまま散々無茶に付き合わされたんだからよ」
 マフラー野郎は枝をくべる手をぴたりと止め、押し黙った。俯いて炎を見下ろす顔に、深い影が落ちる。
暫しの沈黙。焚き火の中の木がぱちりと大きな音を立てて弾けた。
 マフラー野郎はゆっくりと顔を上げる。
「そうだな。少しばかり語らおうか」
 自嘲めいた笑みを口元に浮かべ、マフラー野郎は呟くように言った。

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