第41章


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「あはは、やっぱり。その頃から今の片鱗はあったんだな。生意気だなんて、まだ子どもらしくて可愛らしいもんじゃないか」
「ま、今の奴に比べりゃ幾らかガキらしさが残ってる分マシかもしれねえな。それが、あんなになっちまったのは、
いつからだったか……あれじゃまるで、親父さんの生き写し――。っと、そうそう、それより、あのクソネコにも、
子ニューラの頃と決定的に変わってない所が一つだけありやした」
 何か言いかけたところで、ドンカラスは突然話題を強引に変えるように切り出した。
「なんだい?」怪訝に思いながらもエンペルトは聞き返す。
「へへ、奴は今でも虫、特に蜘蛛が大の苦手なんでえ。必死に強がって隠しちゃいるがな。いつかの酒の席で、
酔ったあいつがぽろりと漏らしたんだが、なんでもガキの時にポッポの卵と間違えてイトマル共の卵を
里の食糧庫までこっそり沢山持ち帰ったんだと。そうして次の日、卵の様子を見に食糧庫にいったら、
そこには孵化したイトマル共が壁に天井にうじゃうじゃと……その光景は今でもたまに夢に見るらしいぜ。
親父さん達にも後で大目玉食らって、それ以来トラウマなんだとよ。マヌケだよな、クハハ。今度奴が洋館に来たら、
試しに蜘蛛の玩具でもいいからひょいと投げつけてやりなせえ。飛び上がって悲鳴を上げるかもしれねえぞ」
「後が怖いから遠慮しておくよ……。しかし、トラウマになっているほど苦手となると、今いざ本物のイトマルや
アリアドスに出くわしたら、どうなってしまうんだろうな」
「シンオウには海を挟んだリゾートエリア辺りにまで行かないとあの蜘蛛共はいねえからいいが、もしもバッタリ
本物と出くわしたりなんてしたら、泡吹いてぶっ倒れちまったりしてな。ま、なんにせよ痩せ我慢は長くは持たねえだろうさ」

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