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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[99]〃月〃日(銀時)

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｢銀時、お願いがあるんだけど…ゴホッゴホン。

お寺の孤児達と遊園地に行く約束してたのに…ゥゲホッゲホッ…風邪ひいて、今朝から熱があるのよ…ゴホッ。

私の代わりに、近藤さんと一緒に行ってあげてくれないかしら？｣

そう頼まれて子供好きの俺が意気揚々と向かったのは、大江戸遊園地の入り口だった。

途中お寺でガキ５人を預かり、手を引いて歩いて来たのだが…

何だか近い将来の坂田家をシュミレーションしているようで、ちょっと嬉しくなる。

子供ってのは本能のみで生きてるから思った事をストレートに言うし、自分の我が通らなければスネるし、眠たくなったら素直に寝るし…

無垢な真っ白い布のような純真さには心洗われる。

春爛漫の陽気の下、｢銀ちゃんパパ｣の愛称で呼ばれながらおしゃべりし、歩く事１５分。

大江戸遊園地の入り口付近で、見慣れた男の姿が見えた。

ぺったり黒髪に三白眼…

真選組の土方だ。

全く…楽しい子供達とのお出掛けを頼まれた日に嫌なヤツに出会うなんて、どんだけツイてないんだ、俺は。

ヤツも俺の姿を見るなり、露骨に嫌そうな顔をした。

しかし何故アイツが遊園地なんかにいるんだ？

あっ、さてはどっかのイイ女と待ち合わせってか!?

｢おぅ、マヨネーズ王子じゃねェか。

何だよ、どっかの尻の軽いネェチャンと待ち合わせか？

ジェットコースターで『キャーッ』ってなって、お化け屋敷で『アタシ怖ァ～い！』って腕組んで、とどめは観覧車で『チュ～ッ！』てか。｣

｢バ～カ。誰が今どきそんな古いラブコメみたいなベタなデートするか！

お前こそ何だよ。

華蓮に黙ってキャバ嬢と同伴か？それともアフターか？｣

奴は相変わらずの憎まれ口をたたいたが、そんなもんじゃ俺ぁノーダメージだよォ～だ。

｢このクソガキらのどこがキャバ嬢だ！

お寺のガキだよ。

華蓮が体調崩したから、『代わりにゴリラと一緒に遊園地に連れてってやってくれ』って頼まれてよォ。｣

すると奴は俺に対し、信じられない言葉を吐いた。

｢え…じゃあ華蓮来ないのか!?

俺、風邪ひいた近藤さんの代わりにここへ来たんだけど…｣

え、何なに？どーゆー事!?

近藤の代わりにって事は…

俺、今日一日コイツと子守りィィィ!?!?!?

嘘だ、ウソだと言ってくれ、神様ァァァ!!!!!!

・―・―・―・―・―・

｢銀ちゃんパパ、アレに乗ろうよ！｣

遊園地に入るなり一番最初に子供達が選んだのは、メリーゴーランドだった。

やっぱそうだよな！かわいいもん、メリーゴーランド。とりあえず遊園地来たらコレ乗っとかなきゃ！

｢いいねェ、メリーゴーランド！

やっぱ、何はともあれメリーゴーランドだよな、遊園地来たら。

お前いいセレクトしてるよ、ホント。

お前、絶対将来女に困んないわ、ウン。｣

一番長男坊をそう誉めてやると、嬉しそうに首をすくめた。

｢アタシ、白いお馬さんにする！

トシパパはどれに乗る？｣

土方にそう話し掛けたのは末っ子の女の子だった。

生まれて初めて呼ばれた｢パパ｣の称号に、土方は戸惑いを隠せないでいるようだ。

ウヒヒ、いい気味だ。さっき子供達を手懐けて、｢トシパパって呼べ｣と躾ておいたんだ。

もっとイジって、もっと辱しめを受けさせてやるゼ！

俺は子供達に改めて入れ知恵をする。

｢あれェ？トシパパは[トシパパ]って呼ばれるのが嫌なんだってさァ～。

じゃあ代わりに[マヨパパ]って呼ぶ事にしちゃおぅかァ～。

よし、じゃあみんなで呼んでみよう！せーのっ!!｣

｢マーヨーパーパー!!｣

土方に向かって、[うたのおにいさん]風に新しい称号を叫んでやった。

道行く人々が、オッサン二人とガキ五人という奇妙なコラボレーションに振り返る。

｢こんなとこでやめてくれ、恥ずかしい!!

もうわかった、もういいから！

[トシパパ]でいいから!!｣

さすがの土方もこの作戦には参ったらしく、赤い顔をして子供達を制止した。

ヒヒヒ、ざまァみやがれ。

｢銀ちゃんパパ！私、この白いお馬さんに乗るからね!!｣

上の女の子が、俺に向かって笑いかけた。

そばに行き、脇を持ち上げて乗せてやろうとすると、彼女は俺の手を振り払い、口を尖らせて言った。

｢やめてよ！もう私、大きいから一人で乗れるもん!!｣

えっ…そんな…

俺、何か悪い事したか？

それどころか優しく丁寧な紳士的行動を施したよな!?

オイィィィ、そんな淋しい事言うなよォォォ!!

…ん？これはもしや…

思春期の娘が｢もう子供扱いしないでよね。パパなんか大嫌い！プン!!｣とかなった時の心境と同じなんじゃないか!?

んである日『私の白馬の王子様よ』なんて言って男を連れて来たらなんとまァ顔中穴だらけのピアスバカみたいなんがやって来て、そこで俺、キレるんだ。『どこの馬の骨とも知れん男に、うちの娘をやれるかァァァ!!』とかって。

でも娘は[白馬に乗った王子様]とやらに乗ったんだか乗られたんだかで既に腹に赤ん坊がいて、後戻り出来ねェシステムになってるワケよ。

そのうち籍入れて生活していくうちに、あれよあれよという間に次から次へとまた赤ん坊が出来ちゃって、呆れる俺らに娘が言うんだ。

｢だって彼、馬並みなんだもん♪｣

って。

アァァァ～～～!!父親って、なんて切ない商売なんだァァァ!!

そんな思いを廻らしながら乗っているうちに、メリーゴーランドはメロディーが止み、速度も緩まり、停止した。

気が付くと俺はピンクの馬にまたがり、人目もはばからず嗚咽をもらしていた。

・―・―・―・―・―・

次は人工池のスワンボートに連れて行かれた。

｢…で、何で俺が男の子３人乗せて、お前が女の子２人だけなわけ？｣

土方が不満そうに俺に問う。

横着な事言うんじゃねぇや。きさま、天下の[鬼の副長]だろうが。

だったらその根性見せてくれや。男の子３人乗せて!!

｢よし、じゃあ漕ぐぞ、娘達ィ～！

スワン銀ちゃん号発車!!｣

俺は足下にあるペダルを一足踏み込んだ。

その瞬間、ドンッ！と音がし、船体が揺れた。

何事だ!?

見ると土方の乗るボートの側面にぶち当たってしまっていた。

｢アレ～？ごめェ～ん！

なんかァ、隣の小汚いアヒルボートにぶつかっちゃった感じィィィ!?｣

驚いた土方と男の子軍団は、目を丸くしてこちらを眺めている。女の子２人と俺は、ニヤニヤ笑いながら土方号を後にした。

｢わぁぁ、銀ちゃんパパすごーい！かっこいい～!!

速くて気持ちいいね！｣

女の子２人は船体から身を乗り出して興奮している。

それを目の当たりにした俺は、またさらにヤル気がみなぎってきた。

しかし…

｢よォォ～っしゃあァァァ～!!

一気に追い抜くゼェェェ～!!!!

どけどけどけどけェェェ～!!!!!!｣

と、後ろからヒートアップした声が聞こえて来たかと思うと、銀ちゃんスワン号の尻に体当たりをお見舞いされた。

ドンッ!!

先ほどの俺達からの時とは比べ物にならない程の衝撃を受け、俺達はヤツらを睨み付けた。

｢てめぇコノヤロー、オカマ掘りやがったなこんちくしょー！｣

俺は熟練たる腕前で素早く向きを変え、土方に向かって構え、猛スピードで突っ込んでやった。

｢うらァァァ～～～!!｣

ドンッ！

体当たりした鈍い音がした後、

メキメキメキメキ…

ボッシャ～～ン!!

というとんでもない音が付属した。

そこにいた全員が窓から顔を出し、スワンの上を仰ぎ見た。

スワンは２体共に首から上がもげていた。

・―・―・―・―・―・

｢子供達のテンションにも疲れたところで、おとなしく射的でもしようか｣

と、珍しく土方と意見がまとまった。

さっきのボートレース以来、女の子２人は俺の事を｢かっこいい｣と言ってそばを離れない。

そいつらにひとつずつ射的用の空気銃を持たせ、俺は後ろに下がり、眺める事にした。

しかしぎこちない手つきで撃ち放つ為、弾は的に当たらず逸れてばかりだ。

そんな彼女らを見ていると、攘夷志士として無邪気に戯れていた頃の俺達を思い出した。

毎日毎日飽きもせず、ケンカに遊びに剣の日々。

だけどそんな俺達も、今ではそれぞれ万事屋を営んだりだの、大貿易船で宇宙を駆け巡ったりだの、まだ攘夷活動を呼び掛けたりだのと好き勝手やっている。。

｢ホラ、ここ持ってみろ。

そんで左手はこう…そうそう。｣

俺はいてもたってもいられず、気が付けば女の子の背中越しに銃の構え方を教えていた。

｢いいか、そのままよく的を見るんだぞぞ。

行くぞ！せーの…｣

ガキの小さく細い指と俺の指を重ね、頬と頬を引っ付けて目線を合わせ、呼吸があった瞬間に引き金を引いた。

パンッ!!

銃は乾いた音をさせ、的に向かって飛び込んで行った。

弾は的の[二等賞]を射った。

｢おめでとうございます!!

二等賞品はこちら、ウサギのぬいぐるみです!!｣

・―・―・―・―・―・

夕方、疲れ果てて眠ってしまった下の子二人をそれぞれ俺と土方で背負い、帰路についた。

｢まったくイイ気なモンだよ。

こっちも疲れてるってのによォ…。｣

そう言いながらも、この重さが心地好く感じられる。

俺の袖には相変わらずガキが引っ付いており、一人はさっきの射的で当てたウサギのぬいぐるみを抱えている。

｢お前、そんなどこにでもあるようなウサギのぬいぐるみ貰っちゃってどうすんだよ？

置く場所あんのかよ。｣

するとガキは嬉しそうにぬいぐるみを両手で抱き締め、言った。

｢一緒にお布団で寝るんだもん。これから毎日。

だって、このウサギの頭の白い髪の毛、銀ちゃんパパみたいでかわいいんだもの…。｣

・―・―・―・―・―・

｢ゥゲホッゲホッ…

なんか封書が来てるわ。

何なに？

【スワンボート２台請求書】

…って、何コレ？｣

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