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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[97]３月１日(神楽)

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｢あれ？病院って…

大江戸総合病院じゃないアルか？｣

華蓮ちゃんの定期検診に付き添って来たところは、いつもよく行く大きな病院じゃなく、ショボい町の医院だったネ。

｢大江戸総合病院はね、昔私が勤めてた頃のお医者さんや看護師さんがいっぱいいるから…なんか小っ恥ずかしくてね。｣

そう言いながら、華蓮ちゃんはガラスドアを開けた。

中に入るとショボい外観とは違って意外に小綺麗な感じで、ソファーや壁紙、受付カウンター、全てピンク系でまとめてたヨ。

｢坂田華蓮さんですね。

それでは待合室でお待ち下さい。｣

ピンクのナースウェアのお姉さんに促されて、アタシと華蓮ちゃんはソファーに腰掛けた。

｢アタシ、雑誌でも読むネ。｣

隣にあるカラーボックスを見たら、[たまひよ]や[名付けの本]、[胎教マニュアル]に[子育て法]と、お母さんになる人の為の本ばっかり並べてあったアルよ。

｢神楽ちゃん向けの本なんて無いでしょ。

残念だけど。｣

そう言って華蓮ちゃんはカラーボックスに手を伸ばした。

取り出したのは

[あなたはお母さん]という本だったネ。

文庫本サイズの本で、表紙にはお母さんと赤ちゃんと赤い風船が描かれてるアル。

どんな内容なのかを知りたくて横から覗いて見たけど、アタシのまだ知らない漢字ばかりでよく分からないネ…。

｢神楽ちゃん、こんな本はどう？｣

暇そうにしてたアタシを見かねてか、華蓮ちゃんが分厚い本を出してくれた。

それは、[ベビーファッション]という赤ちゃんの服のファッション誌だったアルよ。

１ページ目をめくると、金髪で青い目をした赤ちゃんがお母さんに抱かれて笑っていた。

その隣にはお父さん。

三人で陽の当たるリビングで楽しそうに、幸せそうに笑ってるネ。

そして次のページからは、かわいいベビー服のオンパレード！

思わず｢わあぁー!!｣って声が出てしまったアルよ！

だって、だって

ごっっっさかわいくて、ごっっっさ小っちゃくて、だけどごっっっさオシャレなお洋服がいーっっっぱい並んでるんだモン!!

｢あぁ…｣

あまりのかわいさに溜め息をつくと、隣の華蓮ちゃんも覗き混んで来たネ。

｢あっ、コレ見て！

こんなのかわいいよね。｣

指差した写真は、フリルやリボンが沢山付いた、お花柄のロンパースだったヨ。

｢女の子用ネ。

華蓮ちゃんは女の子欲しいアルか？｣

そう聞くと華蓮ちゃんは、明るい顔で答えた。

｢ウン、絶対女の子欲しい！

だってね、こんなかわいいお洋服もいっぱい着せてあげられるし、髪だって色んな髪型に結んであげられるじゃない。｣

そう言いながら、アタシの髪を撫で、また[私はお母さん]に目を落とした。

・―・―・―・―・―・

しばらく待って、やっと華蓮ちゃんの番が回って来たヨ。

アタシはソファーでお留守番しているつもりだったけど、診察室の前で華蓮ちゃんが手招きしているから行ってみた。

｢いいもの見せてあげる。｣

アタシは手を引かれて一緒に中へ入った。

華蓮ちゃんの言う｢いいもの｣っていうのは、３Ｄエコーだったヨ。

｢ホラ、お姉ちゃん見てごらん。｣

お医者さんは華蓮ちゃんの大きなお腹にヌルヌルしたゼリーを塗り、コンビニのレジの｢ピッ｣みたいなヤツをお腹に当てて、中の赤ちゃんの様子を見せてくれた。しかも立体映像で!!

｢今ちょうど起きてる時間だね。

手足を動かしているよ。｣

モニターに映る赤ちゃんは、モゴモゴしながら、手足を伸ばしたり縮めたりしてる。

｢顔をアップにしてみようね。｣

お医者さんは機械のボタンを押して、赤ちゃんの顔を見やすくしてくれた。

そしたらとんでもない事実が発覚したヨ!!

｢おぉ、この顔は、先日一緒にいらしたお父さんにそっくりだねェ。｣

そう、赤ちゃんは銀ちゃんの寝てる顔ソックリだったアルよ!!

まだ目は開いてないけど、いつか開いた時にはやっばり、あの死んだ魚みたいな目なのかな…

可哀想アル。

たまたま父親があのダメ男だったばっかりに、赤ちゃんまでダメ顔コピーなんて…悲しすぎる事実アル。

だけど華蓮ちゃんはニコニコとモニターを眺めてる。

嬉しそう。

華蓮ちゃんが嬉しそうなのを見たら、アタシもなんか嬉しくなったネ。

｢確かに華蓮ちゃんと銀ちゃんの赤ちゃんなんだな｣って。

｢…おや？｣

お腹の上で｢ピッ｣を滑らせていたお医者さんが、突然それを離した。

何だろう？何か悪いモンでも見つかったアルか？

まさか生まれた時から白髪の天パって決定付ける何かが見つかったとかアルか!?

不安になってお医者さんの方を見ると、笑いながらこう言ったネ。

｢もう男の子か女の子かが分かりますよ。

どうします？｣

えっ！まだ生まれてないのに、もうそんな事が分かるアルか!?

｢華蓮ちゃん…どうするアルか？

聞くアルか？どうするアルか？？｣

｢う～ん…｣

しばらく考えてたけど、華蓮ちゃんはハッキリと言った。

｢生まれてからのお楽しみでいいです。｣

その顔は、満面の笑みに溢れてたネ。

その顔を見たら、さっきのファッション雑誌のお母さんとお父さんと赤ちゃんの笑顔と重なったアルよ。

早く会いたいな、赤ちゃん。

さっきの見たようなかわいいお洋服、早くいっぱい着せてあげたいな…。

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