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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[93]２月１５日(新八)

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今日のお昼ごはんは一人で食べる。

銀さんは｢新機種が入ったから｣とイソイソとパチンコ屋へ出掛けたし、神楽ちゃんは｢半額になったバレンタインチョコ買いに行くネ｣とスーパーへ行ったから。

テレビをつけると、ちょうど【突撃！隣の昼ごはん】をやっていた。

大きなしゃもじを持った落語家のコメスケが、アポ無しで一般家庭にやってきてお昼ごはんをご馳走になり、さらにそこの隣の家にお邪魔してまたお昼をご馳走になる…という迷惑この上ない生番組だ。

僕なんてもし今来られても困るよ。

今朝の味噌汁の残り、しかもあまり具が無い汁ばかりの味噌汁を食べているなんて全国の奥様方に見られたら、恥ずかしい事山の如しだ。

コメスケはいつものようにしゃもじを担いで歩いている。

あれ？たいていこの番組は田舎を回る事が多いのに、今日はなんだか都会の雰囲気だな…

『今日の【突撃！隣の昼ごはん】は、かぶき町からお送りします！』

ブーーーッ!!

かぶき町!?!?!?

おもわず口の中のご飯を吹き出してしまった。

ヤバイ、ヤバイよ！

うちに来るかもしんないよ。

具無し味噌汁なんか見られたくないよ!!

気が付くと僕の足は玄関へ向かい、鍵を閉めていた。

そして人の気配をコメスケに悟られないよう、忍び足でリビングに戻った。

ドキドキしながらテレビの画面を見ると、そこにはうちの辺りとは違う風景が映っていた。

あぁ、良かった。かぶき町はかぶき町でもこっちの方には来ないんだ……

って、アレ？

ココって…

『それでは今日はココ、真選組屯所から【突撃！隣の昼ごはん】!!』

えェェェ～！華蓮さんの職場ァァァ!?

コメスケは、たいそうな門構えにも臆する事なく中へ進んで行く。

いつもの事ながら、本当に図々しい落語家だ。

最も、コイツが落語をしてるとこなんか見たことないんだが…。

コメスケは昼ごはんを目指して屯所内の食堂へたどり着いた。そして勢いよく扉を開き、

『毎度お馴染み、【突撃！隣の昼ごはん】で～す!!』

と元気に叫んだ。

その瞬間、僕と同じくブーーーッとご飯を吹き出してしまった女性がいた。

華蓮さんだった。

それを見逃さなかったコメスケは、ズンズンと華蓮さんの元へやってきた。

『こんちわー、コメスケです！

奥さん、女子隊長さんですか!?今日のお昼はポークソテーですね。

いや～妊婦さんにはもってこいのヘルシーメニューですな!!』

コメスケは、最近少し目立ち始めた彼女のお腹を許可なく勝手にさすった。図々しいにも程があるってもんだ!!

『ちなみに女子隊長、おたくのご主人ってどんな方ですか？』

華蓮さんの顔がひきつり、周囲の隊士達もシーンと静まりかえった。

そりゃそうだろう。

真選組女子隊長の旦那が元攘夷志士で、現在はプー太郎に限りなく近い万事屋をやっているなんて言えるはずがない。

しかしそこは頭の良い華蓮さんだ。

落ち着きを取り戻し、生放送のインタビューに答え始めた。

『主人は会社の経営をしております。』

オォ、さすが華蓮さん、ナイス言い換え!!

そうだよ、間違ってないし、ウソ言ってないもんね。

『ほほぉ、という事は青年実業家ですな！

さすがに女子隊長さんの旦那様ともなると、地位も違いますなァ。

で、どういった業種の経営を？』

コメスケはさらに突っ込んで来た。

彼女は困惑しながらも、控えめな声で答えた。

『えっと…万事屋です。』

さすがの彼女もこれ以上の良い言い換えは出て来なかったようで、正直に本当の業種を答えた。

しかしコメスケは彼女の先程の言葉を真に受け、

『万事屋…？

あっ、なるほど！

色々な業種のお店をお持ちだという事ですね!!

いや～さすが青年実業家だ。』

と勝手に銀さんを高い地位にまつりあげた。

あ～ぁ、こりゃだんだん話がデカくなってきたぞ。

どうするんだろ、華蓮さん。

僕知～らないっと。

『じゃあ女子隊長さんにも色々優しくしてくれるんでしょ？

｢カードで好きなだけ買い物しておいで｣とか。』

『えぇ。そうなんです。

まぁ、うちはまだゴールドカードなんですけどね。』

おいおい、華蓮さん。コメスケが言ってるのはクレジットカードの事でしょ？

アンタが言ってるのは大江戸マートのスタンプカードでしょうが！

エコバッグを１００回持参するとゴールドカードに、１０００回達成するとブラックカードにしてもらえるっていうアレでしょうが!!

それからもコメスケと華蓮さんの禅問答のようなやりとりが行われ、約１０分間のコーナーが終わった。

この間で出来上がった銀さんの新しいプロフィールはこうだ。

◎名前…坂田銀時

◎職種…青年実業家(複数の業種を経営)

◎カードの種類…ゴールドカード

◎身長…１８８センチ

◎顔…黒田アーサー似

◎プロポーズの言葉…『金で苦労はさせない』

◎ペット…大きな白い血統書付きの犬

…ハイ、コメスケの多大なる勘違いから、今までのキャラを見事に覆すニュータイプの銀さんが出来てしまいました。

…てゆーか、もはやこれは顔さんじゃないよな。

銀さんの名を借りた、華麗なる何かだよな。

自分がそんなエライ事になっているとは露ほども知らず、パチンコの景品を持った銀さんが帰って来た。

｢ただいま～。

なぁ新八、俺何かスゴイ事になってるっぽいんだけど。

街歩いてるだけで『青年実業家～』とか、『ゴールドカード所有者～』とか、『黒田アーサー』とか声掛けられるちゃうんだよねェ～。

ウン、来たわ。ついに来たわ、俺の時代が!!

民衆よ、我の前にひれ伏すのだ!!

わははは…｣

真実を知らないって、素敵な事ですね、銀さん…。

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