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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[92]２月１０日(近藤)

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屯所の食堂に食材を届けに来る卸業者の優希ちゃんは、最近目に見えて大人っぽくなった。

オカッパのひっつめ髪をロングに伸ばし、爪にはネイルアート、顔もキレイに化粧を施し、そして…

急に胸も大きくなった気がする。

ついこの間までまだ幼い『少女』と思っていたのに、ある日突然大人びて『女性』になった。

さては優希ちゃん、恋をしているな？

・―・―・―・―・―・

廊下に出ると、食堂に荷を下ろし、玄関に向かおうとする優希ちゃんに出くわした。

｢おっ優希ちゃん、ご苦労さん！

今日もカワイイね。

最近急に色気付いちゃって、どうしたの？

さては誰かイイ人でも出来たか!?｣

挨拶がてら優希ちゃんを冷やかすと、彼女は真っ赤な顔をしてうつ向いてしまった。

｢なんだよ、図星かい？

それなら恋愛経験豊富なこの近藤局長に相談…｣

その時、コロコロと音をたてて何かが転がった。

拾い上げてみると、それは俺のワイシャツのボタンだった。

｢あ、取れちゃった…。｣

と俺が呟くと同時に、優希ちゃんがそのボタンを取り上げ、

｢アタシ、縫います。

っていうか…縫わせて下さい!!｣

と俺の目を熱く見つめた。

この子の瞳はなんて水分を帯びた瞳なんだろう。

ウルウルと今にも涙が溢れそうなその目で見つめられ、俺は

｢…ウン。｣

と頷くしかなかった。

・―・―・―・―・―・

｢お裁縫道具、華蓮さんからお借りしてきました。

ワイシャツ貸して下さい。

私、縫いますから！｣

お裁縫箱を持って局長室に入って来た優希ちゃんは、小首を傾げて笑顔で手を差し伸べた。

彼女に言われるままワイシャツを脱ぎ、手渡すと、顔を赤らめてこちらを見ないようにしながら受け取った。

下着も着てるしズボンもはいてるんだから、別に恥ずかしがる事ないのになァ。

彼女は器用に針に糸を通し、チクチクと縫い始めた。

｢おっ、なかなかやるじゃない！

手際がイイよ。

優希ちゃんみたいな家庭的な娘(こ)に想われてるヤツは幸せだなァ。

そんな男はどこのどいつなんだろうなァ!?まったく!!｣

再び冷やかすと、彼女は針から目を離さず言った。

｢…本当にそう思いますか？｣

心なしか声が震えている。

しまった！ちょっと思春期のナイーブな女の子をからかい過ぎたかな？

可愛くて純粋な娘を見るとついついちょっかいを出したくなる、オジサン特有のの悪い癖だ。

｢ごめん、ちょっと悪ふざけが過ぎたね。

冗談だよ！｣

慌てて取り繕いながら肩を叩くと、彼女はその手を両手でギュッ握り、またあの水分を多分に帯びた熱い瞳で俺を見た。

｢冗談…なんですか？｣

その瞳はもう少女のそれではなく、一端の成熟した大人そのものだった。

｢私、局長さんの事が好きです。

ずっとずっと好きでした。

昔、局長さんは私に言ってくれましたよね。

『君が大人の女性だったらお嫁さんにしてあげるのになァ』

って。｣

言ったかなァ…ていうかその言葉、子供みんなに言ってるような気がする、俺。

ついこの間まで子供と思っていた女の子に手を握られ、不覚ながらドキドキしている大人げない俺の心を知ってか知らずか、彼女は自分の胸元に俺の手を運んだ。

｢私、もう大人です。

だから局長さん…｣

俺は彼女の突然の大胆行動に、尻餅をつくように飛び退いた。

｢あ…あの…

ボボボボタン付けありがとう！

俺、仕事しなきゃ…仕事。ウン。｣

彼女からワイシャツをひったくり、急いでボタンを留めた。

優希ちゃんは自分の取った大胆行動にようやく気付いたのか、焦ってお裁縫箱を片付け、恥ずかしそうに部屋を出て行った。

二つ隣の襖の開く音がしたので、おそらく華蓮さんに道具を返しに行ったのだろう。

しかし最近の娘ってのは、マセているというか、早熟というか、積極的というか…

気が付けば俺は、手のひらを見つめながら先程の胸の温度と感触を思い出していた。

・―・―・―・―・―・

｢華蓮さん、私…ついに彼に告っちゃった！｣

｢え！本当に!?

で、どうだったの？｣

｢まだ答えは聞いてないけど、でももうちょっとプッシュすればイケそうな気がする!!｣

｢そうよ、その意気よ！

だってもう胸は完璧に大人の女性ですもの。

あとは来週の手術で下の[バベルの塔]を切除すれば、完璧な女性になれるもんね!!｣

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