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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[91]２月５日(土方)

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ザキの部屋から何やらピコピコと音がする。

｢おい、ザキ。

それ何の音だ？｣

襖を開けて中に入ると、たたんだ布団にもたれ掛かって、ザキが何かやっていた。

｢あぁ、副長。

コレですよ、弁天堂ＤＳ。｣

ザキは手に持っていた電子手帳のような物を俺に向かって見せた。

｢ペンを使ったりボタンを押したりして操作する、ポータブルタイプのゲーム機ですよ。｣

｢ふ～ん…ちょっとソレ貸してみろ。｣

百聞は一見にしかず。

口で説明しながら実演してくれるザキからそれを取り上げ、俺もザキの布団にもたれ掛かった。

そして改めて画面を見てみると、見覚えのある懐かしい顔が映し出されていた。

｢オイ、これってもしかして昔やってた【超麻里夫兄弟】じゃねェのか？｣

するとザキは首を横に振り、溜め息をついた。

｢あ～ぁ、これだからファミコン世代の人は…

これは【麻里夫】は【麻里夫】でも、【新超麻里夫兄弟】ですよ！｣

マジでか!?

という事はあのヒゲの配管工、俺達が子供の時からオッサンなのに、まだ現役で人気あんのか!?

｢そういえばコレ、ファミコン時代と操作方法は変わらないみたいですよ。

やってみますか？｣

そう言うと、ザキは横からスタートボタンを押した。

するといにしえより変わらない、あのテーマソングが流れて来た。

♪テレッレッテレッテントン♪

｢ウオォォォ～!!｣

その俺の中に眠っていた懐かしい曲が、久々に感動と共に甦る。

それからは俺もよく知る歩くキノコや飛ぶ亀などが、どんどん現れた。

それを[昔取った杵柄]で片っ端からやっつける。

｢このヤロッ。オラッ！オラッ!!｣

ＤＳ初体験ながらどんどん突き進む俺の鮮やかな手さばきに、隣から覗き込むザキも圧倒されている。

どーだ、ダテに【麻里夫シリーズ】を制覇してないゼ！

しばらく進むと、[？ブロック]があった。それを麻里夫にこぶしで小突かせると、でっかいキノコが出て来た。

｢よっしゃ！これで【大人麻里夫】になれる!!｣

俺の麻里夫はジャンプしてそれをゲットした。

すると…

｢ギャアァァァ～!!

何だよコレ!!｣

麻里夫は俺の想像以上に成長し、画面いっぱいに巨大化し、ピカピカと発光し始めた。

｢ほら、副長！早く進まないと！

いま無敵状態なんですから!!

それは[デカ麻里夫]で、土管やブロックも壊せるんですよ。｣

ザキに促され、慌て十字キーを押した。

そうか。最近の麻里夫は進化したんだな。

しかし、その感心もつかの間、麻里夫はあっけなく溝に落ちてしまった。

｢ハァァァ～!?

オイ、ザキ。コレどーなってんだよ!?

何で自分の身体より小さい溝に落ちんだよォォォ!!

物理学的にあり得ねェだろがァァァ!!｣

するとザキは怯えた目で言った。

｢し…知らないッスよ！

俺、弁天堂の社員じゃないですし…

それにそもそもこのゲーム自体が、キノコでデカくなったりファイアー出したりと、丸々非物理学的なあり得ない事だらけじゃないですか!!｣

そりゃそーだ。お前を責めた俺が悪かった。

しばらく進むと、今度は水中ステージになった。

ここでスイスイと効率的に進むには、やはりアレが必要だな。

｢オイ、ザキ。

カエルスーツってどこら辺でゲット出来るんだ？｣

するとザキは首を傾げた。

｢だからカエルスーツだってば。

あんだろ、あの緑色したカエルの着ぐるみ！｣

しかしザキはそれを知らなかったようで、

｢いや、ソレ…【新超麻里夫兄弟】には無いです。｣

え、無いのか!?じゃあ麻里夫は誰の助けも受ける事無く、地道に泳ぎきらなくてはならないのか!?

｢じ…じゃあタヌキスーツは？

ほら、シッポで空飛んだり、お地蔵さんになったり…｣

｢あぁ、それも無いッスね。｣

えっタヌキスーツも!?

シッポでの攻撃やお地蔵状態が意外に使い辛くてやっかいだったけど、飛行時には大活躍！の、なかなか使えるアイテムだったのになァ。

｢あっ副長、そのブロック叩いて下さい。｣

ザキが指差した所にあるブロックを、また麻里夫に小突かせた。

すると、小さな青いキノコがピョコンと飛び出した。

｢早く早く！あのキノコ取らないと!!｣

ザキに急かされゲットすると、途端に麻里夫が小さくなった。

｢あ～っっっ！テメェわざと小さくなるキノコ取らせやがったな!!コンチクショー!!｣

殴り掛からんばかりに腕を振り上げると、反射的に頭を隠したザキが言った。

｢ち…違いますよォォォ!!

試しにそれでジャンプしてみて下さいよ。｣

俺はＡボタンを押した。すると…

｢ウオォ～、何だコレ!!｣

いつもの倍以上のジャンプ力になった上、さらには滞空力も備わった。

｢スゲェー、スゲェよ麻里夫!!｣

俺は旧友の新たなる姿に拍手を送った。

気が付けば、俺は二時間もザキの部屋でゲームをし続けていた。

しかし一度ついた火はそうそう鎮火するはずもなく、俺はなかなか腰を上げられずにいた。

初めは好意的に貸してくれていたザキだったが、やはり二時間も借りっぱなしともなると暇をもてあまし、さすがに機嫌が悪くなってきた。

仕方無い。

｢ザキ、コレ持って行って来い。｣

俺はケツポケットにあった財布をザキに向かって投げた。

｢え？行けって…

どこにですか？｣

俺は画面から目を離さず答えた。

｢弁天堂ＤＳ本体と【新超麻里夫兄弟】のソフトを買いに行くに決まってんだろ!!｣

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