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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[90]２月２日(沖田)

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時々、姉上の遺品が詰まった段ボール箱を開けてみる。

箱を開ける度に、姉上の優しく甘い残り香が部屋に放たれる。

目を瞑って深呼吸すると、瞼の裏に、元気に笑う姉上が鮮明に浮かぶ。

俺はその瞬間が楽しみで開けているようなもんでさァ。

たいていは上の方に入っているものだけを見て満足し、すぐに閉じるのだけど、何故か今日は底にある物まで探り出していた。

すると中から、トイレットペーパーのように巻かれた布が出てきて…

白くて長い、これは…サラシ？それともマワシか？

それにしても何に使うのだろう？

姉上が持っているという事は、女性だけが使うもんですかィ？

俺はそれを手に、局長室へ向かった。

・―・―・―・―・―・

｢近藤さん。

コレ姉の形見なんですが、何か分かりやすかィ？｣

部屋で書類を整理していた近藤さんは手を休め、俺の持っていた布を手に取り眺めた後、優しく微笑みこう言った。

｢腹帯だよ。｣

ハラオビ？腹巻きみたいなもんか？

｢腹帯っていうのはな、妊婦さんが腹を冷やさない為、または腰の負担を軽減する為などの意味で巻く布なんだ。

妊娠５ヶ月の[戌の日]から巻くんだそうだ。

犬は多産で流産が少ないというところから、縁起物とされているんだよ。｣

ふぅ～ん。

でもまだ妊娠した事の無いはずの姉上が、どうしてこんなものを持っていたんだろう？

疑問に思っていると、近藤さんが腹帯をスルスルとほどき始めた。

そして最後まで解き終わったところで、俺の目の前に差し出した。

｢ホラ総悟、見ろ。｣

近藤さんが指差した部分を見ると、そこには犬の絵と名前が刺繍してあった。

｢あ…コレ、お袋の名前…｣

まさかの隠れポイントに驚く俺に、近藤さんはニッコリと微笑んで言った。

｢おそらくお母様の使ったお古を受け継いだんだろうな。

『いつか自分も誰かの赤ん坊を宿して、コレを巻こう』

…そんな思いで大事にしてたんだろうな、ミツバさん。｣

『誰かの赤ん坊』…

悔しいけれど、何故かマヨネーズ野郎の顔が浮かんだ。

｢じゃあ俺は赤ん坊産めないから、華蓮さんにでもあげますかねィ。｣

解けた腹帯をクルクルと巻き直す俺に、近藤さんは突然厳しい口調になり、諭した。

｢バカ言うな！

それはミツバさんの遺品であると同時に、お母様の遺品でもあるんだぞ!!

…お母様はお腹のお前をそれで守ったんだぞ。

だからそれは、沖田の名を継承する者を妊娠した女性、すなわちお前の奥さんになる人が受け継ぐべきなんだよ。｣

沖田の名を継承する者…

姉上が亡くなったのを機に、武州の実家は取り払ってしまった。

それと同時に、[沖田家]は絶えたものと思い込んでいた。

しかし、事実俺の身体には[沖田]の血が流れている。

俺はこれを伝え継ぐ者なのだ。

その重責や責任感を急に感じざるをえなくなり、俺は思わず腹帯を握り締めた。

｢さて、次にそれを巻く人ってのはどんな女性(ひと)かなァ～。

酢昆布のすっぱい匂いがするんだろうなァ、総悟!!｣

冷やかすように笑う近藤さんに対し俺は赤くなるだけで、次の言葉が出なかった。

そんな俺に、近藤さんは俺の尻を叩いてこう言った。

｢だがコレを巻かせるようになるには、まだちと早いから気を付けるんだぞ。｣

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