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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[76]12月10日( 〃 )

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｢それではお待たせ致しました！

ただいまより、【第１回かぶき町町内会各店対抗のど自慢大会】を開催致しま～す!!｣

ついに始まった。

町の者は皆、[優勝賞品…金一封]の回覧板が回った日から、目の色を変えて準備に取りかかって来た。

華蓮も毎晩、『残業』という名のカラオケ通いが続いた。

みんなキバってんだ、万事屋(うち)も負けじと助っ人を調達してきた。

秘密兵器投入で、金一封は絶対俺達のモンだぜ!!

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｢えー、アタシこんなの嫌アルよー。｣

金髪ウィッグに真っ赤な口紅をつけた神楽が、控え室の鏡を覗いて口を尖らせた。

｢神楽ちゃんは歌わせてもらえるだけいいよ。

僕なんか銀さんから『後ろのシンセサイザーでトランス状態になっとけ』って言われてるんだから。｣

茶髪のツーブロックウィッグを被った新八が、神楽に言い返した。

｢フン、そんな事を言っているようではまだまだ甘いな。

俺は今日、勝つ気で来た。

貴様らもあの憎き真選組を倒す為、命懸けの熱唱で奇襲をかけるのだぞ!!

見ていろ、真選組。歌でもって天誅を食らわせてやるわ!!フハハハハハ…｣

パーマヘアウィッグを嫌がって着けず、結局はいつものロン毛にサングラスのみで出場する桂が口を挟んだ。

そう、助っ人とは何を隠そう桂なのだ。

神楽のKEIKOに、新八の小室哲哉、それに桂のマークパンサーで[globe]をやるのだ。

今なんやかんやで話題のグループだしね。

控え室には、様々なコスプレの出場者達がひしめきあっている。

[キャバクラすまいる]は長いマフラーの三人組で【羞恥心】だな。

[かまっ娘くらぶ]は従業総出でセーラー服…まさか【オニャンコクラブ】!?

[ホストクラブ高天ヶ原]はボーズ頭にスジ入れてサングラス…っつー事は【EXILE】か。さっきから一生懸命ダンスの振り付けの確認してるよ。やっぱ男前揃いの店は違うねェ。

そして真選組は…

ゲゲッッッ！何だあの衣装!!

華蓮は超ミニのフリフリスカートに、付けまつげバッチリのアイドル風に仕上がって、仁王立ちしていた。

何やるつもりだ、アイツ!?

ソレ、３０に片足突っ込んでる女が着ちゃいけない物断トツ１位でしょうがあぁぁ～!!

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予選会である午前の部が終了した。

皆さすがに特訓に特訓を重ねていたと見えて、強敵ばかりだった。

特に[ソープランド泡姫]がやったパンチラ見せつつの【AKB48】は絶品だった。

その強豪達を蹴落とし決勝に残ったのは、万事屋扮する【globe】と、真選組女子隊長・華蓮扮する【松浦亜弥】だった。

正直、嫁さんの【あやや】は目に優しくない。

そりゃあ元ミス大江戸小町なんだから、手足長くてスタイルは良いさ。

だけど、だけどさァ、２９歳だよあの女。

ちょっと年齢的にも痛くないか？

痛さを表すとすれば、足の小指をタンスの角にぶつけるくらいの痛さだよ、コレ。本人はちょこっとの事だと思ってたのに、実はスゲェ痛いんだよ。

【あやや】なんてのは今人気のニューハーフに任せときゃいいんだよ。全く…。

真選組、誰も止めなかったのかよ。

…って、隊士全員あさぎ色の法被にハチマキして、親衛隊するくらい【三十路手前あやや】をプッシュしてんのかよ!!バカだろお前ら!!

一方万事屋(うち)は、神楽の棒読みKEIKOの印象さえ消し去ってしまう程の乱れっぷりを魅せた新八小室と、見事なまでの原曲無視ラップ、その名も[カツラップ]で会場全体を[自分ワールド]に引き込んだ桂の実力で決勝まで勝ち進んだ。

ここまで来たからには負ける訳にはいかない。

家族を養う為、金一封をどうしてもいただかなければならないのだから。

たとえ相手がかみさんだろうと手加減はしないぜ。

・―・―・―・―・―・

午後になり、決勝戦が開始された。

歌う順番は公平にジャンケンで決めた。

｢ジャンケンポン!!｣

真選組代表のゴリラはチョキを出し、万事屋代表の俺はパーを出した。

奴は俺に向かってニヤリと笑いかけ、仲間の元へ帰って行った。

どーせ『先制パンチをお見舞いしてやる』ぐらいに思ってんだろ、バーカ。

そうはいくか。

こっちにはナァ、とっておきの秘策って奴があんだよ!!

俺は控え室へ戻り、早速その準備に取りかかった。

しばらくすると、ステージ上から華蓮の歌声が聞こえて来た。

確かに上手い。

しかしあの女の事だ。歌唱力と衣装くらいで満足するタマじゃない。

おそらく振り付けも完璧にコピーされているに違いない。

俺はステージ裏の控え室テントから顔を出し、奴の様子を伺った。すると…

やっぱりねー。

親衛隊をバックに従え、【三十路手前あやや】が気持ち良さそうに『ズバッ!!と』やっちゃっている。

あ～ぁ、会場のお客さん失笑だよ…。

そうこうしているうちに華蓮の歌が終わり、俺達の番が回って来た。

｢やるからには優勝ネ。｣

三人は真剣な面持ちで、ステージに向かった。

曲は予選会と同じ。

しかし演出担当の俺としては、全く同じ物を観客に見せるなどという安っぽい事だけはしたくなかった。

そこで決勝での演出は、一捻り入れる事にした。

万事屋の歌が始まった。

相変わらず神楽はビブラートを入れる訳でもなく、ただ棒のような歌をご披露している。

観客も｢またか｣といった表情だ。

よし、今だ！

俺は茶色いロングヘアーのウィッグに白いワンピースでステージに飛び出した。

そして会場の｢おぉ｣という歓声の中、新八小室に駆け寄り、抱き付いた。

胸には[華原朋美]と書いた名札を貼り付けてある。

そこでしばらく二人で仲良く踊り狂うのだが、赤ん坊の人形背負った定春がブレイズに結ったウィッグを被って走って来て、俺達をドンと突き飛ばす。

胸には[ASAMI]の名札。

今度は新八小室はASAMIと踊り始める。

それからやはりASANIとも別れ、最終的には神楽KEIKOと共にクネクネと踊り出した。

そして曲が終わる頃にはもちろん…

新八小室の腕には手錠。

完璧だ。

｢♪ジャンッ♪｣と曲が終了すると、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。

やった！

【globe小室哲哉の人生編】上手くいったぞ!!

俺達は観客の拍手の中、足取りも軽くステージから降りた。

・―・―・―・―・―・

数分後、審査員達からの結果発表が始まった。

審査員はうやうやしい手つきで、優勝者の書かれた用紙を広げた。

観客も出場者も、応援者も、皆固唾を飲んで見守っている。

そして…

｢【第１回かぶき町店対抗カラオケ大会】の優勝は…

【めっちゃホリデー】を歌った真選組です!!｣

｢きゃあ～！毎日残業した甲斐があったわ!｣

真選組一団は、手に手を取り合って喜んでいる。

一方俺らは、｢時事ネタを取り入れるのも結構だが、あまりに調子に乗りすぎて行き過ぎている｣と注意がなされた。

何だコレ!?

いい大人が【朋ちゃん】やって、優勝逃して、挙げ句注意勧告を提示されたなんて、コレ以上の辱しめがあるかァァァ!?

ちっくしょ～!!!!

落ち込む俺の肩を叩き、桂が言った。

｢すまんな、銀時。

真選組に一泡吹かせるつもりが、うっかり優勝を逃してしまった。

やはり曲の間のラップを『♪攘夷がJOY JOYで攘夷♪』ではなく、『♪女医がJOY JOYで女医♪』にするべきだったな。

ウン、抜かった。｣

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