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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[72]11月17日(華蓮)

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夢を見た。

幼い頃の夢。

まだ両親が共に暮らしていた頃、うちはそこそこ裕福な家庭であった。

習い事も色々したし、休みの度に遠出もした。

大抵の物は買ってもらえたし、私としてはお金や物に不自由は無かった。

ただ、そこに無い物がひとつ。

愛情。

物には不自由しない代わりに、愛に乏しい家庭だった。

父親は金・物・地位にやたらと執着したがる男だった。

金に繋がる苦労ならいくらでもしたし、私達家族が周囲からの評価を高く受ける為なら金に糸目を付けなかった。

でもそこに愛情はこれっぽっちも加算される事は無かった。

つまり私達家族は【アクセサリー】。

彼を彩る為に据えられた飾りでしか無かったのだ。

『私が欲しかったのは物じゃない』

『私が欲しかったのは無償の愛』

『私達はアクセサリーじゃない』

そう心の中で叫び続けた私。

その声が届いた時、彼は家族に背を向け、消え去った。

『余計な事をしゃべる【アクセサリー】は要らない。』

そう、たしかこんな寒い夜だった…。

・―・―・―・―・―・

耳に伝った涙の冷たさで目が覚めた。

｢お父さん…｣

そう呟きかけていた最中だった。

夢だと分かっても、まだ涙が止まらない。

幼い日の淋しい思い出が私を支配し、ただひたすら涙を流れさせる。

『私が欲しかったのは物じゃない』

『私が欲しかったのは無償の愛』

『私達はアクセサリーじゃない』

毎日心で叫び続けた言葉。

愛されたくて投げ掛けていた言葉。

でもそれを受け止める事なく父は去ってしまった。

流れ続ける涙を拭いもせず、生温い虚しさだけを感じていると、柔らかな銀髪が私の顔を覆った。

右手は私の手のひらを握り、左手は頭の下に突っ込んで来た。

そして耳元で優しく聴こえるあの子守唄。

私が欲しかったのはこれだ。

お金でも物でも地位でもない

ただひたすらに【無償の愛】。

無言のそれを幸せな気持ちで受け止めながら、私は再び眠りに落ちた。

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