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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[70]１１月２日( 〃 & 〃 )

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万事屋で一夜を明かした。

とりあえず朝までは正体がバレぬよう、細心の注意を払い続けたが…

しかし辛い一夜だった。

生きた心地がしなかった。

夕飯直後の甘々デザートに吐き気をもよおし、風呂上がりの嫁さんのスッピンに驚き、床の中で｢今夜は？｣と尋ねられて寝たフリをし…

何で俺がこんな目に遭わなければならないんだ。

全てはあの巫女姉妹のせいだ、チクショー！

見付けたらこの[鬼の副長]こと土方十四郎が逮捕してやるかんな!!覚悟しとけ!!

…って俺は今、銀時なんだけどな。

銀時になりきって生活し、疲れきった俺は、朝になってもグッスリ眠っていた。

すると…

｢起きなさーーい!!｣

の叫び声と共にヘッドバットを食らった。

｢ッッッてェェ～！テメェ何すんだよ!!｣

あまりの激痛に布団の上でのたうち回った。

涙目で見上げると、そこには腕組みして俺を見下ろす華蓮がいた。

｢『起きなさい』を３回言うまでに起きなかったらヘッドバットだっつってんだろ、コラ。｣

聞いてないぞ、そんなの!!

チクショー、何であらかじめ教えてくんねぇんだよ、万事屋のヤロー。

俺は猫ツマミされ、リビングに放られた。

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真選組屯所で一夜を明かした。

とりあえず朝までは正体がバレぬよう、細心の注意を払い続けたが…

しかし辛い一夜だった。

生きた心地がしなかった。

なんか訳分かんない書類ドッサリ持ち込まれて｢明日までによろしく｣とか言われるし、食堂で夕飯食おうとしたら女子隊士にマヨネーズ山ほどかけられて｢どーぞ♪｣とか言われるし、部屋のどこ探してもエロ本ねぇし…

何で俺がこんな目に遭わなきゃならねぇんだよ。

全てはあのクソ巫女のせいだ、チクショー！

見付けたらこの[万事屋銀ちゃん]こと坂田銀時が…え～っと、え～っと…とにかく覚悟しとけ!!

…って俺は今、土方なんだけどな。

昨夜の風呂や厠で感じたんだが、コイツのナニは只者じゃねぇ。

どこがどうって言われても困るが…

たぶんサイズ的な事なんだと思う。

パンツは俺と同じくトランクス派なのだが、どうも中に違和感がある。

所在やはき心地が、自分のモノとやや違うようで落ち着かない。

えぇい、ムカつく！

どーせ俺は今土方なんだ。いっそスッポンポンでブラブラさせて屯所中を歩き回ってやろうかァァァ～!!

・―・―・―・―・―・

待ち合わせ場所の例の橋へ行った。

万事屋は俺の上着のボタンをいじりながら、慣れない制服に不服そうにしている。

俺も本当は着物を片掛けなんかにせず、きちんと両腕を通したい。

しかし周囲の目を欺く為には互いの好みを忠実に再現しておく必要があるので致し方ない。

｢オイ、お前さァ…｣

万事屋が口をとがらせてこちらを見ずに言った。

｢あの…アレか？

昨夜はその…やっぱ…｣

｢あぁ、華蓮と同じ布団で寝たよ。

だが指一本触れてねぇ。

神に誓って。｣

奴はホッとした表情で微笑んだ。

顔は俺だが…。

｢そういえばお前、なかなかのモノをお持ちだな。

意外だったよ。

真選組副長で顔も良くて持ち物も立派となりゃ、アレだろ？怖いもん無しだろ。｣

｢なっ…おま…ジロジロ見るなっつったろうが!!｣

いや、そりゃ風呂も厠も行くんだから当然ご披露する場面がある事くらいは百も承知だ。

しかししっかり観察された上、批評まで下されると恥ずかしい事山の如しだバカヤロォォォー!!

｢おっと、そんな事よりも…

あのクソ巫女の事だけどよォ、昨夜おたくのアレ…何つったっけ？バドミントンばっかやってる地味なヤツ…まぁ仮にジミーな。

そのジミーに調べさせたらさぁ、キャバクラの常連客に買わせたなかなか良いマンションに住んでるらしいんだわ。

ところが最近その客が他のキャバ嬢に鞍替えしたんだってよ。

で、昨日ここでやってた儀式ってのが、その客に『チェンジ』と言われた事への腹いせっつーか…呪いの儀式だったらしいんだわ。｣

なるほど、それを中断させたから俺達が『チェンジ』してしまった訳か。

｢で、ここに来る前にそのマンションに行ってみたんだよ。

そしたらさァ…｣

万事屋はポケットからボトルネック用の名札を取り出した。

｢本人達はいなかったんだけど、玄関にコレがあって、メモが添えられてたよ。｣

手渡されたメモには、端的にこれだけ書いてあった。

『【キャバクラすまいる】でボトルキープしてくれたら、魔法解除の方法教えます。』

さすが悪徳キャバ嬢巫女。

あざといやり方で稼ぐな…。

仕方ないので、万事屋と俺は【キャバクラすまいる】へ急行した。

・―・―・―・―・―・

夕刻の店内は既に客で溢れていた。

その中から巫女姉妹の姉・阿音を必死で探し出す。

｢あっ、いた！アイツだ!!｣

俺の顔をした土方が、奥の丸テーブルに向かって走った。

俺もその後ろを追い掛ける。

阿音は自前の御幣を振りながら客のご機嫌取りに夢中になっていた。

｢オイ、クソ巫女！

やっと見付けたぞ。

とっとと俺達の身体と心を返せ！さもなくば逮捕し、真選組屯所に連行するぞコノヤロー!!｣

土方が息巻いて怒鳴り散らすと、阿音はそれまでのテンションとは打って変わって、静かに胸元から何かを取り出した。

｢コレを飲めば元に戻るわ。

但し、うちの玄関のメモにもあったように、ボトルを一本キープしてくれないと渡せないわよ。｣

阿音は意地悪そうな口元にニヤリと笑みを浮かべ、ソレを俺達の前でチラつかせた。

クソッ…！何で被害者の俺達が金払ってボトルキープしてまでアイツの売上に協力しなくちゃなんねぇんだよ!!

しかし背に腹は代えられねぇな。

俺達はそれぞれ一番安い焼酎をキープした。

｢オラ、キープしてやったぞ。

約束通り、ソレよこせ！｣

手を差し出すと、阿音は安いボトルに不満そうな顔をしながら、渋々手のひらにソレを載せた。

小さな紙の袋に入っているソレは、直径２センチ程の茶色くてカチカチに固い物だった。

何だろう？化石？いや、勝ち栗？

｢それをそのまま噛まずにゴクンと飲み込んだら、おしまいよ。｣

阿音は手で口に放り込むマネをした。

コレを飲み込む…

このグロテスクな塊を飲み込むには、かなりの勇気と頑丈な胃袋を要する。

しばらく土方と顔を見合せ悩んだ末に、各々好きなトッピングをして飲み込もうという事に決定した。

奴は吐き気を催しそうな量のマヨネーズ、俺はとろけそうな甘さのあんこを注文した。

たっぷりとあんことマヨネーズを載せ、俺達は｢せーの!!｣で口に入れた。

するとキャバクラのきらびやかな天井がぐるぐると回り始め、俺と土方はその場に倒れた。

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恐る恐る、ゆっくりと目を開けた。

すると目の前には、目を擦りながら起き上がる、万事屋の姿があった。

ということは…

俺は身体中を確認した。

真選組の隊服に腰の刀、せれに黒い髪の毛…

｢……戻った……。｣

安堵で涙腺が緩み、図らずも俺と万事屋は手を取り合って泣いた。

これでまた真選組副長として隊に戻れる！

万事屋のフリして辛い夜を過ごす事も無くなる!!

あぁ、やっぱ俺は俺じゃないとな…。

自分の身体と心が一致した幸せを噛み締めていると、阿音がテーブルで水割りを作りながら言った。

｢よく効くでしょ、そのカメムシの燻製。｣

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