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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[68]10月28日(華蓮)

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ポストにハガキが入っていた。

看護学生時代の友達からだ。

裏には大きな写真入りで

『我が家のニューフェイスです』

とある。

どうやら二人目が出来たようだ。

二人とも女の子。

彼女の御主人によく似た丸顔で、エクボがとても印象的だ。

メッセージ欄には

『またデキちゃいました(笑)

華蓮も早く作んないと！』

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隊士が足を痛め、私が病院に連れていった。

大江戸総合病院。

当然私の元同僚にも沢山出会う事となる。

この歳になると話しはたいがい[結婚]か[出産]。

私が退職して２年、３人の元同僚が結婚したという。

しかも３人共デキちゃった結婚。

別れ際、久々に話した元同僚看護師は言った。

｢華蓮も早く作んないと！｣

・―・―・―・―・―・

帰宅してからの私は、鬱々とした重苦しい気持ちのまま夕飯を作っていた。

『華蓮も早く作んないと！』

かつての友人達からの心無い言葉に、暗に自分が｢不産女(うまずめ)｣と言われているようで泣きたくなる。

いや、むしろ彼女達からしてみれば、なかなか子供が出来ない私を心配しての[心有る言葉]なのかもしれない。

しかし今の私にとって、これほど不要で鋭利で辛い言葉はない。

そんな私の背中から何かを感じ取ったのか、銀時がフラりと外出したかと思うと、ビニール袋いっぱいの缶ビールを下げて帰って来た。

｢オイ、今日は満月だ。月見っぞ。

何かツマミ作れ。｣

・―・―・―・―・―・

部屋の窓際にソファーを移動させ、ガラス窓を開けた。

空高くには円くて大きな月が浮かんでいる。

秋風が吹き込んで来るのを肌で感じながら、私と万事屋三人組は遠く月を眺めた。

｢僕、幼い頃に母親を無くしてて、全くと言っていいほど母上の事を覚えてないんですけど、たった１つだけ覚えている事があるんです。｣

月に蒼白く照らされた新八君は、自分の古い記憶を辿り、語った。

｢縁側で、赤ん坊の僕は母上に抱かれていて、その両側には姉上と父上がいる。

四人で腰掛け、何をする訳でもなくただ月を仰ぎみているんです。

そこでおもむろに母上が歌い出して…｣

新八君は、彼の優しく誠実な心を表しているかのような柔らかな声で歌い始めた。

♪待ちぼうけ～待ちぼうけ～…

｢あっ、その歌アタシも知ってるネ！

マミーとよく月見ながら歌ったアルヨ。｣

♪ある日せっせと野良稼ぎ～…

神楽ちゃんも立ち上がり、一緒に嬉しそうに歌い始めた。

二人共早くに親離れを余儀無くされ、暮らしている。

普段はそんな寂しさや辛さなど微塵も感じさせない彼らだが、今夜の横顔には切なさが滲んでいた。

｢俺ら、家族だよな。｣

そんな彼らを側で眺めながら、銀時が呟いた。

｢家族でさ、ただ月眺めて飯食ってるだけだよ。

そんだけだよ。

なのにこんだけ幸せに感じるって、何だろな。

こんな吹けば飛ぶようなちっぽけな幸せでも、『それを護る為なら俺ァ何だってするよ』って気になるもんな。

俺ガキん時からみなしごだから、家族ってどんなもんか知らずに生きてきたけど…

こーゆーのが[家族]なのかな。

俺ァこの家族さえあれば何もいらねェ…最近そう思えるようになったよ。｣

片手に缶ビール、片手にキンビラごぼう。

月に向かって、１番ばかりを繰り返し歌い続ける二人を見守る銀時は、一家の主の顔をしていた。

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