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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[64]１０月８日(華蓮)

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今朝からどーもおかしい。

朝起きたら顔に畳の跡がついていたし、

さっきもあり得ない場所で足の小指をぶつけたし、

朝食を作ろうと炊飯器を開けたらタイマーがセットされておらず、水を吸ってブクブクに膨れた生米だけが入ってたし、

定春は珍しくお漏らししてるし…

今日はツイてない。

もしかして一日中こうなのかしら？

まさかね…

・―・―・―・―・―・

今朝の一連の出来事を思い浮かべながら、定春の背にまたがり出勤する。

今日はなんだかあまり良い気運ではないのかもしれない。

あまり大きな仕事はせず、無難に過ごそう。

しかしそうもいかないのが真選組の仕事なのだ。

屯所内の私の部屋の机に、一枚のメモ書きが残されている。

【かぶき町地域の担当刑事さんが代わりました。

本庁で行われる引き継ぎ会議に出席して下さい。】

武骨なその字体はおそらく局長だろう。

私は早速本庁へ出向いた。

・―・―・―・―・―・

｢新しくかぶき町地域に配属となりました、葛城です。｣

そう挨拶するのは、前任の小汚ないオッサンとは丸っきり違う爽やかジャニーズ系好青年だった。

ツイてる！

今日はツイてない日だと思い込んでたけど、とんでもない。

超ラッキーデーじゃん!!

｢坂田隊長ですよね。

綺麗で賢いとのお噂は耳にしていましたが、これほどまでにお美しいとは…｣

そーなんですゥ、私、綺麗なんですゥ。

｢これから仕事で御一緒させていただけるかと思うと、とても楽しみですよ！｣

イケメンとの仕事、私も楽しみィィィ!!

｢ではこれからよろしくお願…｣

『♪猪木～ボンバイエ～!!
♪猪木～ボンバイエ～!!

♪ファイッ!! ファイッ!!

………』

数名のお偉方とイケメン刑事がひしめく会議室に、私のケータイの音が鳴り響いた。

それもまさかの[アントニオ猪木のテーマ]…。

さっきまで私に優しく微笑みかけてくれていたイケメン刑事が、着メロを聞いた途端ドン引きしたらしく、握手を求めようと差し出した手を引っ込めた。

あ～～失敗!!

猪木に元気を注入してもらおうとして着メロにしたばっかりに…。

やはり第二候補の[おぼっちゃまくんのテーマ]にするべきだったかな。

いや、でもあの歌詞も『♪リッチなあいさつそうともだちんこ～♪』だから、いずれにしろドン引かれるのか…。

やっぱツイてない。

・―・―・―・―・―・

嬉しいはずのイケメン刑事らとの会議も不発に終わり、私はガックリと肩を落としながらパトカーのドアを開いた。

やっぱ今日はおとなしくしとくに限るわ…

溜め息をつきながら乗り込もうとしたその時、パトカーの天井でおでこを打った。

そうか、今日乗って来たのは軽のミニパトだった。

いつもの乗用車サイズのパトカーに乗り慣れているから、天井の低さに気付かなかったんだわ。

しかし痛ェな、チクショー…。

おでこのジンジンとする痛みに耐えながら、私はエンジンをかけた。

しばらく走っていると、おでこから生温かい何かが滴り落ちて来た。

思わず手で触ると、それは真っ赤な血だった。

さっき天井にぶつけた時、傷になっていたらしい。

私は急いで屯所に帰り、洗面所へと走った。

鏡を見るとおでこの血は固まり始めており、どす黒く変色している。

とりあえず血で汚れた顔を洗おうと蛇口をひねり、洗顔フォームで顔をマッサージした。

頬を円を描くように優しくマッサージしていると、少し油断したのか鼻の穴に両手の小指がスポッと勢いよく入った。

｢痛ﾞェェェーーー!!!!｣

あまりの痛みに足をバタつかせながら悶えていると、また顔に血が付いていた。

どうやら今度はおでこではなく鼻かららしい。

顔にバシャバシャと水をかけると、ピンクに染まった泡が排水口に吸い込まれて行った。

わわわ、ヤバイ！スッピンで鼻血出してるとこなんか、隊士に見られたら大変!!

私は急いで小鼻をつまみ、洗面台にかがんで止血を試みた。

しかし意外に深くまで指を突っ込んでいたらしく、なかなか血が止まらない。

やっぱツイてない…。

洗面所に佇み溜め息をついていると、後ろから足音がした。

するとガラリと音がし、誰かが戸を開いた。

｢アレ？坂田隊長、どうなさったんですか？｣

振り向くと、女子隊の京子が驚いた顔で立っていた。

驚くのも無理はない。

顔面血だらけでスッピンの私を見れば、百戦錬磨のプロレスラーだって驚くさ。

｢坂田隊長、それって鮮血…

ということは、喀血ですね！

すぐ救急車呼びますから、待ってて下さいね!!｣

そう、鮮血は喀血で、どす黒い血は吐血ね。

よく出来ました。

私の教えがこんなところで生きるとはね～…

って、喀血じゃないから!!

私は慌てて電話しようとする京子を止めた。

・―・―・―・―・―・

｢すいません、早退させて下さい…。｣

あまりに不幸続きで、今日は仕事をする気が失せた。

私はとぼとぼと歩き、家路についた。

早く帰宅したので、今日は少し凝った料理でも作ろうか。

私はお手製のハンバーグソースを作る為、冷蔵庫からトマトペーストを取り出した。

お鍋に中身を移そうと瓶のフタをひねると、意外にもフタは固く閉じていた。

｢くうぅぅぅ～～!!｣

布巾を被せてひねるが、それでもフタは開かない。

そういえば[ガスの火でフタの回りを炙ると開く]と以前誰かが言っていた。

早速私は瓶を火の上にかざした。

すると火力が強すぎたらしく、中の空気が急激に膨張し、瓶が音を立てて割れた。

私はあまりの衝撃に悲鳴を上げ、床に尻餅をついた。

そんな私の悲鳴と爆発音に驚いて、銀時と神楽ちゃんと新八君が台所に駆け付けた。

｢オイ、何だ今の。

大丈夫か!?｣

私は床にへたり込み、トマトまみれで呆然としていた。

そんな姿を見た三人は、口々に感想を述べた。

｢…派手な生理か？｣

｢違うアルヨ。痔・ALFEEネ。｣

｢いやいや、どう見ても下血ですって！

大変だ、救急車呼ばなきゃ!!｣

やっぱ今日ツイてない…。

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