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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[63]１０月３日(新八)

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銀さんから、怪しげな衣装を手渡された。

シースルーのベールが付いた帽子と、ベストと、ダボダボのズボン。

銀さんは黒、神楽ちゃんは赤、僕は緑色のセットだ。

｢え～、オホン。

君たちにこの衣装を進呈したのは他でもない。

昨今の占いブームに乗っかって、俺たち万事屋も占い屋さんをやろうという腹…いや、魂胆…違うな。計画…

そう、計画なのであります！｣

また始まった。

何かとブームに目ざとい銀さんの【乗っかっちゃおう商法】。

今までにもオバケのお祓い屋とか色々やらされたけど、今回は占い屋か。

でも僕、占いなんてやった事ないよ。

銀さんだってそのはずだ。

どうするつもりだろう？

｢ハイ、じゃあコレ持ってね。｣

神楽ちゃんにはタロットカード、僕には裏の白いチラシとボールペンが配られた。

銀さんは水晶玉を持っている。

…いや、あれは純然たる水晶ではない。たぶんプラスチック樹脂だ。

中に所々気泡が見える。

｢ハイ。

お分かりの通り、神楽には[タロットカード占い]、新八には[あきすとぜねこ占い]を担当してもらいま～す。｣

[あきすとぜねこ]…懐かしいなァ～。

名前の文字数を[あきすとぜねこ]に当てはめて占うっていうアレでしょ？

例えば｢てらかどつう｣なら六文字だから、[あきすとぜねこ]の[ね]で｢熱中｣…やったぁ～、お通ちゃんは僕に熱中してるんだ～!!…となる。

…って、んなワケねぇだろォォォ～!!!!

何で僕だけ中途半端に古典的!?

何で僕だけなんかダサい感じ!?

僕も銀さんの水晶玉とか神楽ちゃんのタロットみたいな｢そこそこデキます｣的なのがいいよォォォ～!!

・―・―・―・―・―・

僕ら３人、名付けて[占いビッグ３]は、繁華街の歩道脇にテーブルを構えた。

どっから拾って来たんだか知らないけど、テーブルに掛けられたクロスには大きく【易】と書いてある。

｢銀さん、僕ら易占いはやらないでしょ。

なのにどう考えてもおかしいでしょ、コレ。｣

一応疑問点に触れてみると、銀さんはいつもの飄々とした様子で言った。

｢あー、コレ？

ハッタリハッタリ。

つまり『占いなら一通り何でもやるよー』みたいな？

まぁ最悪『どーしても易で占ってくれ』っていう客が来りゃ、コレ出しときゃいいんじゃね？｣

銀さんはテーブルの下から、花瓶と数本の割り箸を取り出した。

割り箸の先には赤ペンで[大吉][中吉][小吉][末吉]と書いてある。

｢コレをこーして…っと。

んで、客に好きな割り箸を引かせるっつーシステムだ。｣

[システム]ってアンタ、花瓶に割り箸のクジ入れただけじゃん！

しかもそれを引かせるって、易占いじゃなくてタダのおみくじじゃんよォォォ!!

｢心配するな、新八。

凶や大凶は入れてないから。

いいから顔、ベールで隠せ。客来るぞ。｣

いや、そんな事じゃなくて…。

先行きに不安を感じながらベールを被ると、早速お客がやってきた。

｢いらっしゃいま……!?｣

僕らの前に座ったのは紛れもなくあの巨体のゴリラ、真選組局長の近藤さんだった。

いや、アンタ占いっていうタイプじゃないだろ。

豪放磊落でむしろ｢占いなんかクソ食らえ!!｣な人でしょ。

｢あの、僕、好きな人がいるんです。

その人と結婚出来るかどうか占って欲しいんスけど…。｣

うわ、｢僕｣だって。気色悪ッッッ!!

だいたい好きな人って、うちの姉上だろうが！

警察のクセに年がら年中ストーカー行為を繰り返しやがって。

すると銀さんがおもむろに、水晶玉を両手で撫で始めた。

｢…見える。ワシには見えるぞ。

おぬしのホレておる女とは、志村妙。

そしておぬしはその女を毎日毎日つけ回しておるな。｣

よく言うよ。水晶玉見なくても知ってるクセに。

しかしズバリ言い当てられた近藤さんは、銀さん扮する占い師をすっかり信用してしてしまっている。

この人の頭中はなんて単純構造なんだ…。

｢しかし今のままでは通じ合う事は不可能。

おぬしの想いを遂げるには…｣

銀さんはまたテーブルの下から何か出した。

｢このお札を部屋に貼るしかないな。

五千円なんだけど…どうする？｣

手に持ってるソレ、ドッキリマンシールじゃん!!

チョコウェハースと一緒に入ってるヤツじゃん!!

そんなのに五千円も払うバカがどこに…

いたよ、ここに。

近藤さんは大事そうにドッキリマンシールを持ち帰った。

銀さんはニンマリと五枚の千円札を数えている。

なんてズル賢くて商売上手なんだ、この男は。

しばらくすると、今度は女性のお客が来た。

…見たことある。

このピンク色の着物、見たことある。

ヤバイ。この人は、この人だけは…!!

｢志村妙と申します。｣

姉上ェェェ～!!!!

バレたら殺される。

偽物占い師が僕らだってバレたら確実に殺される！

｢私、ゴリラのストーカーに毎日つけ回されて困ってるんです。

何か良い方法が無いか占っていただけません？｣

…って気付いてないよ、この女！

つーか気付けよ、弟が目の前にいるんだから!!

｢ではアタシが占ってしんぜよう。｣

神楽ちゃんが立ち上がり、何やら呪文のようなものを唱えたかと思うと、勢いよくタロットの箱を転がした。

｢…ウン、分かった。

ゴリラにあなたの玉子料理を食べさせなさい。｣

そりゃ効くわ。

姉上の[必殺・玉子料理]なら、どんな宇宙生物も敵わないよ。

ていうか神楽ちゃん、タロットカードの使い方、違うよ。明らかに。

姉上は料金を支払うと、喜び勇んで帰って行った。

おそらくこの足で大量の卵を買いに走るに違いない。

お昼近くになり、僕らもお腹を空かせていると、見慣れた黒い上着の男性が席に付いた。

｢ヤツが俺の事をどう思っているか占ってくれ。｣

そう言いながら、タバコに火をつけた。

真選組の頭脳、[鬼の副長]こと土方さんだ！

｢ではチパンシー、君が占って差し上げなさい。｣

銀さんが僕を見て促した。

[チパンシー]って…？

あぁ、[シンパチ]を逆から読んだわけね。

僕は裏の白いチラシとボールペンを取り出した。

｢えーっと…では、そのお相手の方のお名前をお聞かせ下さい。｣

土方さんはタバコをスパッと一息吸い込み、煙を吐き出しながら答えた。

｢[マヨネーズ]。｣

…ハイ？

｢だぁーから[マヨネーズ]だっつってんだろ！

早く占えよ!!｣

お前、どんだけマヨネーズ命なんだよ!!

｢お前なしじゃ人生も味気無い｣ってか!!

仕方無い。お金の為、お客のニーズに従おう。

[マヨネーズ]…５文字か。

という事は…

僕はチラシに[あきすとぜねこ]と書き、説明した。

｢あー、残念ですがお客さん…

[マヨネーズ]さんは、あなたと[絶交したい]と考えておられますね。｣

するといつもの自信に満ちた顔が、みるみるうちに無惨な涙目になり、

｢…釣りは要らねぇ…。｣

とだけ言い残し、フラフラと去って行った。

なんか僕、正直この仕事にものすごく疑問が生じて来たんですけど…。

｢さて、そろそろウチ帰ってメシにすっか。｣

銀さんが椅子から立ち上がると、女性のお客がやってきた。

あれ、また黒い上着…

｢すいません、占っていただけますか？｣

あァァァ～早く帰れば良かった!!

そしたら来なかったのに!!

一番マズイ人に会わずに済んだのに…!!

今日一番の非常事態に、さすがの銀さんも額に汗が滲んでいる。

｢坂田華蓮と申します。｣

知ってるよォォォ～!!

銀さんなんて僕ら以上に全てを知り尽くしてるよォォォ～!!

どうしよう。詐欺を働いているとバレたらタダじゃ済まない。

姉上どころの惨事では治まらないだろう。

家族であろうと何であろうと、パイルドライバーを掛けた末に[詐欺罪]と称し、ブタ箱に放り込む事も辞さない女(ひと)だ。

そんな僕らの緊張をよそに、華蓮さんは話し始めた。

｢主人がね、所得が低くて正直困ってるんです。

そのクセ甘い食べ物には目がなくて、もうお医者さんには『糖尿病寸前』って言われてるんですよ。

そんなに甘いのが好きなら甘い言葉の一つもかけて、私を糖尿病にしてみろってんですよ。

おまけになかなか子供も出来なくて…やっぱアッチの方もダメな男って事ですかね。｣

黙って汗をかいて座っていた銀さんだったが、ここまで聞いて水晶玉を撫で始めた。

｢…見えるぞ。私には見える。

旦那さんは

『俺は元々巨乳派なんだよ。そんな微生物みたいな乳した狂暴な女、貰っていただけただけでありがたいと思え、コンチクショーめ。

それにアッチの方は決してダメじゃない。ダメなんじゃなく早撃ちガンマンなだけだ!!』

…とおっしゃってますよ。｣

銀さん。

残念ですが、顔面にビッショリかいた汗でベールが張り付いて、顔モロバレです…。

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