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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[53]７月２８日(山崎)

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俺の部屋に、珍しく華蓮さんがやって来た。

いつもの自信に溢れた顔つきとは違い、今日は心なしか涙ぐんでいるような…？

｢ヤバイ、ヤバイのよ！

お願い、助けてザキィィィィィ!!｣

華蓮さんは俺の袖を掴み、畳にへたり込んだ。

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動揺甚だしい華蓮さんを落ち着かせようと、お茶を煎れた。

この間、真選組御用達のお茶屋さんからサービスで戴いた高級緑茶だ。

部屋には上品で爽やかな緑の香りが充満した。

｢ところで何があったんですか？

そんな泣きそうな顔して。｣

お気に入りの萩焼きの湯呑みでお茶を勧めると、それを手にし、彼女は答えた。

｢じ…実は…｣

華蓮さんの湯飲みがフルフルと小刻みに揺れている。

｢ゴキブリと間違えて…

総悟君のドでかいカブトムシ殺しちゃったの。｣

彼女の湯呑みに立っていた茶柱が、スゥーッと底に沈んで行った。

沖田さんのカブトムシっていうと、サド丸か。

ありゃデカイぞ。

沖田さんの身長よりデカイ奴は万事屋の旦那がやっつけたって聞いた。

という事は、その次にデカイ奴か。

たしか大人の手のひらと同じくらいのサイズはあったような…。

｢私の部屋にいたのよ、ヤツが。

でね、私ってムシ苦手じゃない？

だから反射的に殺虫剤プシューッてしちゃったのよ。

そしたらさァ…

意外に簡単に天に召されちゃったのよね～、コレが。｣

華蓮さんは大のムシ嫌い。チョウチョやトンボ、アリんこまで嫌がり、悲鳴をあげるほどだ。

そんな彼女だ。

部屋にあんなドでかいカブトムシがいれば殺虫剤の一つも振りかけるだろう。

しかし沖田さん、幼虫の頃から大事に育て上げたサド丸を死なせたとなると、相手が華蓮さんとはいえこの上なく怒るだろうな～…。

｢ねぇザキ、どうしたらいい？｣

｢どうしたら｣って、そんな。俺は監察方であって万事屋じゃないんだから…

ん？万事屋？

あ、そうだ！

こんな時こそ【万事屋】だよ!!

｢華蓮さん、おたくの旦那に頼んでみましょう！

あの人なら何とか助けてくれるはずですよ!!｣

華蓮さんの表情は一気に明るくなった。

・―・―・―・―・―・

｢よーし任せとけ！

そんな事くらい、この【万事屋銀ちゃん】がパパパッと鮮やかに解決してやらァ。

わっはっはっ…｣

旦那はそう言って事務椅子にふんぞり返った。

さすが華蓮さんの御主人だけあって、頼り甲斐がある。

華蓮さんも惚れ直したといったところだろうか。

頬を赤く染め、ウットリと旦那を見つめている。

・―・―・―・―・―・

夕方、チャイナさんがムシカゴを持って屯所を訪れた。

｢ご注文の品アルヨ。｣

中にいたのは、厚紙で作った角を付けた巨大ゴキブリだった。

沖田さんのキレる姿が容易に想像出来た。

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