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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[49]８月２９日

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盛夏の衰退と共に、寺子屋の夏休みももうすぐ終わりを告げる。

連日の暑さにやられて疲労困憊しており、非番の日くらいは寮でのんびりしたいのが正直なところなのだが、お寺の孤児達にせがまれて溜まった宿題の手伝いに行ってやる事になってしまった。

｢あっ！華蓮姉ちゃんが来たよ!!わ～い。

あれ？近藤のおっちゃんは？｣

お寺の山門で出迎えてくれた子供達は、大好きな近藤さんの姿を探す。

｢今日はね、久し振りに真選組に帰って来る人をお迎えに行ってて、お出掛け中なの。

さぁ、アイスをいっぱい買って来たわよ。
これ食べながら宿題やろっか。｣

・―・―・―・―・―・

真選組に、伊東鴨太郎という人物が在籍しているらしい。

長期出張を繰り返しており、私はまだお目にかかった事はない。

私が真選組に来る前、局長の座を狙ってえらい騒ぎを起こした事があるとんでもない奴だと、土方さんから聞いた。

｢絶っっっ対アイツとは関わるな。
いいな、絶っっっ対だぞ!!｣

何度も繰り返し念を押された。
土方さんは伊東さんをひどく嫌っているようだ。

その人が今日、久々に帰って来る。

みんなの話によるとかなりのインテリで、局長も頭が上がらないくらいらしい。
そして出張の度にお土産の新しい武器や情報を大量に仕入れて帰って来てくれるとか。

局長の虎鉄シリーズや総悟君の菊一文字ＲＸ-７、山崎の長船マークII等の刀も、全て伊東さんのお土産という話だ。

今回はどんなお土産を持ち帰ってくれるのだろうか。

・―・―・―・―・―・

夕方、局長から呼び出されて屯所に出向いた。

おそらく伊東さんが帰って来たのだろう。

局長室へ入ると、近藤さんとメガネのスマートな男性が座していた。

｢初めてお目にかかります。伊東です。｣

メガネの男性が私に微笑み、名を名乗った。

｢山田隊長のお噂はかねがね耳にしています。

その美しさと強さは幕府でも有名ですよ。｣

あらあら嬉しい事言ってくれるじゃない、この人。

確かに見た目と評判を裏切らないインテリのようだ。

｢ジャジャーン!!

華蓮さん、見てくれよコレ!!

この間の剣は総悟が折っちゃったから、また新しいの貰ったんだぁ。｣

子供のような笑顔で喜ぶ局長の手には、自身が気に入って愛用している虎鉄シリーズの最新バージョンが握られていた。

｢この間はミュージックプレイヤー搭載、コロコロ機能も付いたものでしたが、今回はさらにナビが付きました。｣

テレビショッピング並みの流暢なトークで伊東さんが説明してくれる。

何だソレ。
もはや刀じゃないじゃん。

｢山田隊長にもお土産をと思ったのですが、女性の好みはいまいち分からなくて…

このようなものにしてみました。｣

差し出された手には、キラキラに縁取られた刀の鞘があった。

もしかしてこのキラキラは…

｢スワロフスキーのストーンを使って、特別に作らせたものです。｣

やっぱり!!
輝きが違うわ～。
なかなかセンス良いじゃないの。

｢他の女子隊士達にはカワイイ靴紐をあげたんだってさ。｣

まぁ、気が利くのね。

何だ。
土方さんが言う程悪い奴じゃないじゃん。

・―・―・―・―・―・

｢よぉ、帰ってたのか。｣

｢御無沙汰しております、土方十四郎殿。

相変わらずの威圧的なお出迎えだねぇ。｣

｢お前こそ相変わらずの嫌味な奴だ。｣

｢フッ…まぁアンタに好かれようなんてこれっぽっちも思っちゃいないけどね。
ところで例の女子隊長に初めて会ったよ。

なかなかの美人じゃないか。｣

｢気に入ったようだな。お前、見た目だけの女、昔から好きだもんな。

だが気を付けろよ。

あいつに限っては甘く見てっと痛い目見んぞ。｣

｢ハッ、この俺が？
まさか。

女を恐れるとは、弱くなったもんだな、土方。｣

｢…近藤さんが一度コテンパンにやられた。

それ以来誰もあの女に逆らう者はいない。

近藤さんも一時期敬語で話し掛けてた。｣

｢ほぉ～…ご忠告ありがとう。

益々気に入った。あの女を落としてみたくなったよ。｣

｢…好きにしろ。｣

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