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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[47]８月１５日

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セミのジージー鳴く声が最高潮に達している今日この頃。

世間はお盆休みという事もあり、暑さそっちのけで賑わっている。

しかし私達真選組にはお盆･正月などの国民行事はほとんど無いに等しい。

24時間年中無休で江戸を守る…それが真選組なのだ。

仕事の合間を縫って、ミツバちゃんのお墓参りに行く事にした。

いつものピンクの花束をヘドロさんのお店で購入し、お寺の墓地へ急ぐ。

ミツバちゃんの形見であるコンコルドクリップは、私のトレードマークとして毎日胸ポケットから見守ってくれている。

今日も強い日差しにラインストーンが反射して、輝きを増している。

今では私にとって無くてはならない相棒の一つだ。

お寺の境内裏手にあるミツバちゃんのお墓は、小さいながらも大理石を使った立派なものである。

弟･総悟君の姉･ミツバちゃんへの想いが込められた一体だ。

水桶を手にし、彼女が眠る場所へ行くと…

既にお墓参りを済ませた形跡がある。

激辛煎餅とマヨネーズ。

生前ミツバちゃんは自分の大好きだった激辛煎餅を、江戸で働く総悟君の元に送り続けていたそうだ。

｢毎回毎回辛過ぎて食えなくて、迷惑極まりなくて…本当に困ってたんでさぁ。｣

時々総悟君の思い出話にそれが出てくるが、その話をする時の彼の表情は、｢困っていた｣というセリフとは裏腹にいつも嬉しそうだ。

その思い出を姉弟で噛み締めながら、ここで語り合っていたに違いない。

一方マヨネーズをお供えした奇特な人は…他でもない土方さんだろう。

普通はお供え物にそぐわない代物だが、考え方によっては激辛煎餅に合う。

現に私は激辛ポテチにマヨネーズを付けて酒の肴にしている。

激辛煎餅とマヨネーズのように、ミツバちゃんと土方さんもお似合いだったのかもね…

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就業時間も終わり、一旦寮に帰って着替えを済ませ、再び出掛ける。

今日は花火大会なので、銀時のうちで一緒に花火を見る事になっているのだ。

神楽ちゃんは総悟君と二人で河原で見るらしい。

新八君はお通ちゃんのお盆ライブへ行った。

つまり久々に銀時と二人きりになるのだ。

万事屋の台所でお夕飯を作る。

｢暑っちぃからそーめんが食いてぇ｣

という銀時のリクエストにお答えして、お素麺を湯がく事にした。

具は金糸卵ときゅうりとハムとトマトとシーチキン。

もちろん卵は銀時好みの激甘口にしよう。

卵をボールに割り入れ、箸で解く。

この時あまりかき混ぜ過ぎるとふんわりしない…と、某３分間の料理番組で言っていた。

テレビで見た通りにカシャカシャと箸を動かしていると、突然背後から腕を回され、強く抱きしめられた…。

年末に再会してから半年以上経つが、手さえ繋いでいない私と銀時。

もしかして今日、また昔のような関係に戻るんだろうか…

そんな予感が胸を過る。

どうしよう。
いい年してドキドキしてるよ。

耳にかかる銀時の熱い吐息に、箸を持つ手が止まってしまう。

｢ダメよ銀時、今は。
せめて料理が済んでからじゃないと…｣

私の言葉を遮るように、銀時の太く逞しい腕が私の肩をさらに強く抱いた。

もう、銀時ったら…

あら、最近腕が毛深くなったのね。

しかも髪の毛だけじゃなく腕まで真っ白になっちゃって…

て…

おや？

銀時……？

｢ワゥッッッ！！｣

驚いて振り向くと、私を抱擁していたのは犬の定春だった。

当の銀時はというと…

ソファーで鼻クソほじりながらジャンプを読んでいた。

定春相手に勝手に酔っていた自分がものすごく恥ずかしくなり、冷凍庫に頭を突っ込んだ…。

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食事の後片付けも済み、ビールと枝豆を手に二人でベランダへ出る。

大混雑する花火大会の会場まで行かなくとも、ここから十分見れると銀時が言っていた。

陽の沈みかけた空を眺めながらビールを飲み、二人並んで夕涼みをする。

しばらくすると…

ヒュ～…

ドン！ドドドン！！

パラパラパラ…

始まった。

毎年恒例、【大江戸花火大会】だ。

夜空に色とりどりの大輪の花が咲き乱れる。

なんと美しいのだろう。

江戸中の人々が魅了され、心待ちにしているのも頷ける。

｢昔、一緒に丘に登ってこの花火見たよな。｣

空を見上げたまま、銀時が思い出を口にする。

｢で、花火が済んだ後、そのまま丘のてっぺんでずーっと星眺めた。

覚えてっか？｣

覚えてるよ。

あんな素敵な思い出、忘れるわけない。

｢お前さぁ…

もう一度あの頃の気持ち、取り戻せねぇ？｣

今まで空を見ていた銀時が、突然真剣な眼差しをこちらに向けてきた。

｢…愛し…｣

ドーン！！ドドーン！！

えっ、今何て言ったの？

花火の音で聞こえなかった。

聞き返そうとした瞬間、彼の顔が近付いて来た。

優しい、懐かしい香りがした。

このまま、もう一度銀時のものになりたい…

｢お～い、銀さんいる～！？
聞いてくれよぉ。また俺バイト、クビになっちゃってさぁ～。｣

サングラスかけたヒゲのオッサンがやって来た。

…誰コレ？

｢…お前

この空気どうしてくれんだよっっっ！？

本っっっ当に空気読めねぇ男だな！！

バイトクビになんのもそれが原因だっつの。

だからまるでダメなオッサン『マダオ』って呼ばれんだよ！！｣

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