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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[46]８月１２日

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毎日茹だるように暑い。

ちょっと外を歩くだけで汗だくになり、ひどく化粧崩れしてしまう。

若い隊士は日焼け止めクリームのみのスッピンで過ごせるだろうが、さすがに私達二十代後半には出来ない芸当だ。

それに加えて、今日の私は二日酔いだ。

昨夜松平氏から飲みのお誘いがあり局長と土方さんと私で行ったのだが、おごりなのを良い事に調子に乗って飲み過ぎたらしい。

普段は[ザル女]の異名を欲しいままにしている酒豪の私だが、夜勤明けで疲れ気味だった事と、認めたくはないが年齢的なものが原因で二日酔いしたようだ。

吐き気と戦いながら市中見廻りに出掛ける。

途中何度も道端で吐きかけたが、まさか真選組女子隊長ともあろう者がそこら辺でゲロゲロする訳にもいかず、死にかけながらも街を巡回し、どうにかこうにか屯所までたどり着いた。

もちろんソッコー洗面所。

｢うﾞほﾞおﾞぉﾞえﾞぇﾞぇﾞ～～…｣

こんな時は女らしさだ何だは言っていられない。
人に見られようが知ったこっちゃない。

思う存分吐いたら多少スッキリしたので、お昼ご飯を食べに屯所内の食堂へ行った。

今日のメニューは
◎白飯
◎トンカツ
◎味噌汁
◎きゅうりのおなます

うぅ～…トンカツか。いつもなら飛び付いて食べるけど、今日みたいな日は勘弁。

｢おばちゃん、ごめんなさい。トンカツはあまり食べたくないんだよね。

今日はアッサリしたものが欲しいから、きゅうりのおなますをいっぱいちょうだい。｣

食後は女子隊長室でしばらく横になる事にした。

調子が悪いお腹を擦りながらゴロゴロしていると、廊下から声がする。

｢山田隊長～、いらっしゃいますか？｣

山崎の声だ。

起き上がって襖を開けてやるのも面倒だなぁ。相手は山崎だし、ゴロゴロしながらの対応でいいや。

｢ど～ぞ～。勝手に入って～。｣

このクソ暑いのにまたバトミントンでもしていたんだろうか。汗だくの山崎が入ってきた。

｢大丈夫ですか？

さっき洗面所で吐いてたみたいでしたけど…。｣

見られてたのか。

｢食堂でおなますばっかり食べてましたね。｣

さすが監察方。人の事よく見てんな。

｢身体はあつくないですか？｣

｢…夏だからあついに決まってんだろうが、ボケ。

これ以上話すと、また吐くぞ。｣

山崎がこの部屋に来てから唯一言い放った私の言葉に恐れおののき、奴はそそくさと出て行った。

やれやれ、もう一休みしよう…。

・―・―・―・―・―・

夕方、死にそうになりながらも勤務を終えて寮に帰ろうとした時、局長に呼び止められた。

正直、一刻も早く布団に寝たかったのだが、局長からの呼び出しとあらば行かねばなるまい。

局長室には土方さんも同席していた。

二人はコソコソとつつき合いながら、｢お前言えよ｣、｢あんたが言えよ｣と譲り合っている。

｢あ～…えっと、その…

今日、なんか吐いてたみたいだね。

大丈夫？｣

結局局長が切り出したが、何故か態度がよそよそしい。

｢えぇ、何とか。｣

｢そっか…。｣

そのまま局長室はシーンと静まりかえった。

その居心地の悪さに、土方さんが口を開いた。

｢この事、万事屋は知ってんのか？｣

｢いえ、特に知らせてはいませんが…。｣

いちいち二日酔いくらいで連絡しないよ。

｢じゃあ、お前一人で解決するのか？｣

｢まぁ、そういう事ですよね。｣

明日になれば治るだろうし。

二人は顔を見合わせて、深刻な表情をしている。

一体何なんだ？どうもさっきから様子がおかしいぞ。

｢そうか。
華蓮さんがそう覚悟しているんなら仕方無いな。

俺達も出来る限りの協力はするよ。なぁ、トシ。

…で、産むの？｣

…は？

｢いや、だからお腹の赤ちゃん。｣

…赤ちゃんって…？

｢お腹に、坂田君の赤ちゃんが出来たんでしょ？｣

｢ハァァァ！？！？｣

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どうやら事の発端は、山崎の勘違いかららしい。

いつもの｢局長、大変です！！｣から始まり、

｢華蓮さんが妊娠してるみたいです。

間違いありません。

洗面所でゲーゲー吐いてたし、酸っぱいおなますばかり食べてたし、体温も高くなってるみたいだし、そして何よりお腹を擦ってました！｣

と局長に報告したらしいのだ。

想像力豊かな青年だこと…。

局長と土方さんに事の真相を洗いざらい話し、ガセであると分かってもらったが、当然ながら山崎は土方さんと一緒にボッコボコにしてやった。

赤ちゃんなんか出来る訳がない。

銀時と再会してから何もしてないどころか、手さえ繋いでないんだから…。

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