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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[39]４月２８日(華蓮)

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｢あっ…！｣

私の前を車が走って泥が跳ね、制服にベッタリかかってしまった。

雨上がりの今日は、路肩で違反取り締まり…いわゆる[ネズミ捕り]をしている。

あちこちに水溜まりの残るこの場所で張って小一時間、ついに私の服が汚されてしまった。

困ったな。思った以上に泥が跳んでいる。

着替えといえば、先程近所のおじいちゃんから｢老人クラブの旅行のお土産だよ｣と貰った、[佐渡島]と描かれたＴシャツぐらいしかない。

仕方無い。センスにいささかの疑問は残るが、このままでいるのも気持ち悪いので、[佐渡島Ｔシャツ]に着替えよう。

・―・―・―・―・―・

近くの公園のトイレに入り、早速着替える事にした。

個室に入ると窓の下に小さな棚があり、多少物を置くことが出来る。

上着を脱いでそこに乗せると、意外にも泥は深部にまで至っていた。

どんどん脱いで確認すると、ベスト・ブラウス・タンクトップを通過し、下着にまで到達していた。

こりゃ参ったな。

服はどうにかなるけど、ブラの替えまでは用意してない。

でも泥の付いたブラなんか気持ち悪いしな…

自分とのしばらくの葛藤の末、やはりブラを脱ぐ事にした。

Ｔシャツから透けるであろう乳首には、絆創膏をバツ印に貼っておいた。

Ａカップの私には、これくらいの応急処置で十分だ。

よし、これでとりあえずは屯所の部屋まで帰れる…

と思ったその時だった。

窓の外からスーッと手が伸び、何者かが私のブラを掴んだのだ。

｢だ…誰!?｣

驚いて窓を開けると、その手の主は赤い自転車で一目散に逃げ出した。

私も奴を追い掛ける為、急いでトイレから出た。

｢あ、華蓮さんお帰りなせェ。

もう着替え終わったんですかィ？｣

｢どいて！窃盗犯捕獲するから!!｣

呑気に切符を切っている総悟君を乱暴に押し退け、私はパトカーのキーを回した。

アクセルを一気に踏み込み急発進すると、砂埃が舞い、隊士達がむせているのがバックミラーで見えたが、今はそれどころではない。

私は、どう～しても、どう～～してもあのブラを取り返さないといけないからだ。

あのブラは[都隣婦]の、かなり値の張る総レースブラだったし、

それに…

直進して２キロ程の所で赤い自転車の奴を見つけた。

｢そこの赤い自転車、止まりなさい!!｣

マイクで呼び掛けると、奴はこちらを振り返りながらスピードを上げた。

コノヤロー、逃がすか!!

私もスピードを上げた。

しかし奴は急遽右折し、車では入れない細い路地に走り込んだ。

チクショー、諦めてたまるか!!

だってあのブラは[都隣婦]だし、高価だし、それに…

目の前にはラーメン屋の自転車が停めてあった。

｢ゴメン、ちょいとばかし借りるよ!!｣

私はパトカーを乗り捨て、店主の返事も聞かずにおかもちスタンドの付いた自転車に飛び乗った。

立ちこぎで路地を抜け、長屋街に出ると、奴がはるか遠くに見えた。

｢コラァァァ～待ちやがれェェェ～!!｣

漕ぎ足フル回転で追い掛け、すぐ側まで追い付くと奴は驚き、自転車を投げ捨てて小さな児童公園に走って逃げた。

ここは乗り物禁止とされているので、私も仕方無く自転車から降り、走って追い掛ける。

しかし体力も限界に達した私は、ヘトヘトになっていた。

今まだこうして足を前に踏み出せるのは、おそらく｢あのブラを取り返さなくちゃ!!｣の一念によるものだろう。

犯人も同じく疲れているのが見てとれる。

だんだんと足がもつれてきているようだ。

フラフラしながらも追いつ追われつをつづけていた私達だが、ついに犯人が石にけつまずき、コケた。

私はすかさず捕獲し、倒れた犯人の手首に手錠をはめた。

犯人も既に諦め顔だ。

奴の手から大事なブラを取り戻した私は、奴の耳にそっと語りかけた。

｢てめぇ、そのブラＢカップだった上に極厚パッド２枚も入れて使ってた事、取調室とかで絶ッッッ対に言うんじゃねーぞ。

もしも言ってみろ。

…地獄見せてやんぞ。｣

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