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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[39]６月２８日

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｢あの、山田隊長、
お客様です。

[坂本辰馬]さんとおっしゃる方なのですが…。｣

門番の男子隊士が私を呼びに来た。

坂本？

知らない名前だけど、何の用事だろう。

取り敢えず門まで出て話しを伺おうか。

｢おおぉ、あんたじゃ、あんたじゃ。

例の[渋谷戦車隊パレード]ぶちかましたハチキンじゃ！！｣

…誰だコイツ？
赤いジャケットに下駄、サングラスって、どーいう趣味してんだ。

｢ワシゃ坂本辰馬っちゅーて、宇宙を飛び回って舶来品の輸入貿易をしとるもんながじゃ。｣

貿易商が何の用だ。
私相手に押し売りでもする気か？

｢あの日たまたまワシも渋谷におって、あんたが先頭切って戦車隊を引き連れておるのを見とったが。

それで、あまりの良い女っぷりに、その時からあんたに惚てしもうたがよ！！｣

はあぁ～！？一目惚れ！？

普通、戦車乗った女なんかに一目惚れするか！？

｢いや～、気に入った！

戦車の上のあんたもキレイじゃったが、目の前のあんたはもっとも～っとキレイじゃ♪｣

褒め殺して、何か高いモン売りつける気だな。

そうはいくか。

｢ワシは明日の朝までターミナルに船を停めておるから、良かったら倉庫の商品を見せちゃるきに、今夜遊びに来てくれんね？

あんたにどーしても何かプレゼントしたいがよ。｣

プレゼント？

それに釣られて行って、最終的に何故か布団とか契約させられてしまって、ローン組まされて…っていうパターンだな、コンチクショウ。

騙されんぞ！

｢あんたみたいなべっぴんサンに似合いそうな、【類･美豚】やら【愚津痴】やら【婦羅駄】やらのブランド物、色々取り揃えとるき。｣

え、【類･美豚】やら【愚津痴】やら【婦羅駄】…ですか。

…大好き。

｢じゃあワシ、今夜待っとるきに！

愛しとるよ～！！｣

坂本辰馬氏は下駄をカラカラ鳴らしながら去って行った。

ブランド物の倉庫…

ヤバい。

行きたい！！

・―・―・―・―・―・

迷った。

行くか行くまいか、

めちゃくちゃ迷った。

なかなかこういう機会はないし…

かといってやっぱり怪しい所には行くべきじゃないし…

でもやっぱブランド物好きだし…

そうだ、こんな困った時こそ【万事屋】だろう！！

早速銀時の所に電話をした。

｢へぇ～、面白そうじゃねぇか。

行ってみようぜ、その貿易船。｣

一通りの話しを説明すると、銀時は面白がって付いて来てくれる事になった。

良かった。
銀時がいれば高額商品をすすめられても断ってくれるだろうし、坂本とかいう人も私の事は諦めてくれるだろう。

・―・―・―・―・―・

かくして私と銀時は、坂本氏が運営しているという貿易船にやって来た。

さすがに宇宙を飛び回っているというだけあって、並みの大きさではない。

その大きさに二人で驚いていると、坂本氏が扉を開いて出迎えてくれた。

｢おっ！来てくれたがやね、隊長さん！！

首を長～くして待っとったぜよ。

さぁさぁ、入って入って♪

……ありゃ？おまん、もしかして金時じゃないがか？

こんな所で何しとるが？｣

金時？
何言ってんだろ、この人。
銀時ならここにいるけど…知り合い？

｢金時じゃない、銀時だ。
辰馬、お前こそ何やってんだ、人の女捕まえて。｣

『人の女』…えへへ、何か嬉しい響きだ。

｢人の女…って…え！！

隊長さん、金時の彼女だったがか！？

エエェ～、そりゃないぜよ～。｣

坂本氏はガックリと肩を落とし、うなだれた。

｢さぁ、華蓮に何かブランド物くれるってんだろぅ？
ほれ、倉庫に案内しろや。｣

坂本氏はとぼとぼと歩き、船内へ通してくれた。

銀時と坂本氏は攘夷時代の仲間だったそうである。

しばらく会う事もなかったが、今回たまたま再会してしまったらしい。

倉庫には坂本氏の言っていた通り、【類･美豚】やら【愚津痴】やら【婦羅駄】やらとブランド物が溢れかえっていた。

きゃあぁ～、血が騒ぐ！！！

目をキラキラさせて物色する私の横で、銀時は全く興味無さげに鼻クソほじっている。

時たまそこら辺をウロウロしていたが、だんだんと飽きてきたらしく、痺れをきらしてこう言った。

｢ほら華蓮、何かプレゼントするって辰馬が言ったんだろ？

だったら迷うこたぁねぇ。
面倒臭ぇから欲しいモン全～部かっさらっちまえ。｣

きゃ～、銀時男前！！

そうですか。じゃあお言葉に甘えてそーさしていただきます。

慌てふためいて青くなっている坂本氏を視界に入れないよう用心しながら、私は倉庫の着物、バッグ、アクセサリーを端から端まで強奪して回った。

｢さすがイゴッソウの銀時じゃ。

嫁になる女はあれぐらいのハチキンじゃないといかんぜよ。｣

＊【イゴッソウ】【ハチキン】とは……土佐弁で[男らしい男]、[オテンバな女]とかいう意味らしいです。

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