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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[36]６月１日

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６月に入った。

近々梅雨入りし、鬱陶しい時期となるだろう。

新人隊士達の仕事も皆それなりに板に付き、田舎から上京した者も街の暮らしに慣れて来たようだ。

それぞれプライベートも充実してきている様子で、今日も…ほら来た。

｢あのぉ、隊長…その…お願いがあるんですが…。｣

かぶき町班、おっとりぽっちゃり型のルミ子だ。

引っ込み思案だが、仕事熱心で素直な良い娘だ。

この娘は田舎で空手の師範の資格を取り、学生の頃から道場で子供達に教えていたというなかなかの武道家である。

ここに来るまではお洒落に全く興味が無かったのだが、周りの女子隊士達に触発され、最近では非番の日に皆と渋谷や原宿へお買い物に行ったりしているらしい。

そんな彼女に、先日好きな人が出来た。

その彼は十番隊隊長の原田君。
スキンヘッドの恐面でいかつい漢だが、根はものすごく真面目で優しい事で有名だ。

｢お化粧…教えて下さい。｣

｢お化粧？｣

そういえば、服や髪型の変化には私も気が付いていたが、お化粧をした姿はまだ見た事がない。
そうか、成長してるんだな、ルミ子。

｢…明日、原田さんが…一緒にお食事しよう…って。だから…。｣

｢えっ！！もしかしてルミ子、自分から告ったの！？｣

｢いえ、私じゃなくて、原田さんが…行こうって…。｣

へぇー。意外だったなぁ。
原田君もルミ子の事を想ってくれていたのか。

で、早速お化粧の勉強をしたいわけね。

ルミ子赤くなっちゃって、かわいいなぁ。

｢よし、わかった。

じゃあ今夜、希望者を女子隊長室に集めて。

みんなで[お化粧講習会]やるよ！！｣

・―・―・―・―・―・

意外にも[お化粧講習会]には、女子隊士全員集まった。

夜勤の娘達は、｢また今度、絶対私達にも補習して下さいよ～｣と残念がりながら市中見廻りに出掛けた。

早速始めようとメイクボックスを開いたその時、私はある事を閃いてしまった。

廊下へ出てみる。すると食堂から真選組ソーセージをかじりながらナイスタイミングで山崎が歩いて来た。

チャンスだ！！

油断している山崎を素早く私の部屋に引きずり込み、

｢おとなしくなさい。
さもないと、あんたがこの間道場の倉庫でジャンプ読んでたのを土方さんにチクるわよ。｣

と耳元で脅した。

土方さんが定めた【局中法度】に、[マガジン以外の漫画、局内で読むなかれ]というのがある。筋金入りの少年マガジン派である土方さんが勝手に用いた我が儘なルールだが、違反すると…切腹させられる。

山崎は状況がよく飲み込めず驚いている様子だが、おとなしくしておいた方が良い事だけは分かったらしく、ジッとお利口に正座して首を縦に振った。

｢はーい、それでは[お化粧講習会]始めるわよー。

今日のモデルは山崎君でーす♪｣

｢えっ！？えっ！？

モデル！？

お化粧！？！？

どっどういう事ですか、ちょっ…まっ…華蓮さァァァ～～ん！！｣

・―・―・―・―・―・

今回は[デート必勝！愛され系メイク]と題してレクチャーする。
どっかのファッション誌の見出しみたいだなぁ。

細かい事を言えばキリが無いので、取り敢えず一番重要なアイメイクを中心に教える事にした。

十数人の女子隊士が真剣に見つめる中、山崎にメイクを施す。

まず眉は、あまり濃くせずフンワリと薄めに描く。

そして眉間は離し気味に。

次に、アイラインは細めに描く。目尻の下瞼のみ厚めに描き、ちょっとタレ目にすると、可愛い系に。

マスカラは真ん中のマツ毛にたっぷり付けるとパッチリ目に見える。

口紅はキツイ色を避け、肌に近いサーモンピンクやベージュピンクを選ぶ。

グロスは唇の真ん中だけ付けると、ポッテリ唇に見えてかわいさ倍増。

仕上げは髪をてっぺんで結び、逆毛を立てて、飾りを付けて…

完成！！

そして山崎の肩にかけていたタオルを外した瞬間…

｢おおぉ～！！｣

と、歓声とも溜め息ともとれる声があがった。

思っていた以上に山崎の完成度が高く、女の子以上に女の子らしく出来上がっていたからだ。

どうしよう、可愛い、可愛過ぎる…！！

元々綺麗な顔立ちだが、こんなに可愛く仕上がるとは誰も思ってはいなかった。

このままメイクを落とすのは勿体ないので、ついでにもう一つ山崎にミッションを与える事にした。

｢あんたの名前は今から【ザキ子】よ。

そして、今晩中に局長をオトしておいで。｣

｢え！！嫌ですよ、そんなの。絶対イヤ！！｣

｢じゃあ土方さんに…｣

｢ううぅ…『わ…私、ザキ子です♪』｣

・―・―・―・―・―・

まずは局長室へお茶を持って行かせた。

私達女子は廊下で襖に耳を付け、盗み聞きする。

｢あの、局長。お茶です…。｣

｢おぉ、ありがとう…あれ？君、女子隊の子？
名前は？｣

｢…ザキ子…です。｣

｢へぇ～。ザキ子ちゃんかぁ。
こんな可愛い子、今までうちにいたっけかなぁ？知らなかったなぁ。｣

よし、行け！ザキ子！！

｢私はずっと前から局長の事、知ってましたよ。

真選組に入ってからずっと、局長の事だけを見てましたから…。｣

いいぞ、いいぞ、山崎。

｢えっ…それってつまり…俺の事…｣

そこだ山崎、トドメ刺せ！！

｢好きです！局長！！｣

｢！！｣

ブブプププゥ～！！！

あっバカ！！
私と一緒に盗み聞きしていた京子が耐えきれず、吹き出してしまった。

｢！？何だ…！？｣

襖の外の声に驚いた局長が、襖を開けた。

｢どうしたんだ、みんな。
こんなとこで何やってんの？｣

｢局長。

ザキ子はとっても素直でイイコですよ♪｣

｢？？？｣

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