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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[35]４月１日(沖田)

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一年間の活躍ぶりを認められて調子ぶっこいてる女子隊に、また今年もメンバーが増殖した。

新たに２０名。

今までの倍に膨れ上がった女子隊は、既存の男子隊をも飲み込まんとする勢いだ。

初年度はそこそこ使えそうなメンバーを選んで入れていたようだが、今年はどうだろう。

ちょいと品定めに、隊列訓練をしている広場へ行ってみた。

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｢右向け右！

そこ、もっと機敏に動く!!

指先まで気を抜くな!!｣

華蓮さんの厳しい指導が広い敷地に響き渡っている。

俺は邪魔して叱られないよう、物陰からコッソリ双眼鏡で眺めていた。

フムフム、なるほど。

昨年は十代が結構な数を占めていたが、今年は二十代前半を集めたみたいですねィ。

[武術の腕]の翌年は、[学歴･経験]ってとこですかィ。

ツラに関しては、昨年度はなかなかの粒揃いだった…

って、アレ？

なんか違くないか？

なんか一人、あきらかに華蓮さんより年上の奴が混じってねェか!?

動き鈍いし、体型も子供２・３人産みましたみたいな崩れ方だし、何より顔が容赦なく老けすぎだろォォォ!!

一体コイツ、何を期待されて入隊したんだ!?

・―・―・―・―・―・

どうもあのオバサン隊士の事が気になったので、近藤さんの部屋に行き、履歴書を見せてもらった。

写真はまさしくあのオバサンと一致している。

つまり間違えて入隊したわけではないという事だ。

生年月日は…

【平成元年１月２日】

…って平成生まれなんて、ぜってーウソ言ってるって!!

しかも平成元年って１月５日から始まったんだから、１月２日なんて日にち存在しねぇよ!!

誤魔化しきれてねェよ!!

嘘の履歴書に釘付けになっている俺を横で見ていた近藤さんが、

｢やだなァ総悟、もう新人隊士に目ェつけちゃったワケ？

何、その人みたいなのが好みなのか!?｣

と、冷やかしてきた。

いや、ナイから。

俺、その路線の趣味はナイから。

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お昼。

食堂には例の新人達も来ていた。

女の増えた食堂は、キャイキャイキャイキャイ以前に増してやかましい。

あーウザイ。

テレビの音が聞こえやしねェよ。

全く女ってのはどっからあんな超音波みたいな声出してんだか…。

イラつきながらテーブルに着くと、横からソースの瓶を手渡す者があった。

あ、あのオバサン隊士だ。

｢一番隊の沖田隊長ですよね。

目玉焼きにかけるでしょ、ソース。｣

オバサンはさっきの入隊式の自己紹介だけで俺の名前を覚えたらしい。

｢いや、ソースは要らね…｣

断ろうとすると、すかさず入れ違いに違う瓶を差し出した。

｢しょうゆ派でしたか？｣

いや、てゆーより何もかけないから、目玉焼きには。

屯所(うち)でソースだのしょうゆだのをかけるのは、おそらく近藤さんと土方と華蓮さんだけだ。

つまり昭和生まれのオッサンとオバサンだけ。

という事はやはりコイツも平成生まれなんかじゃないという事だ。

そんなウソまでついて入隊したいのか。

オバサンはムッシャムッシャと飯にがっついていたかと思うと、今度は突然俺の服を掴んで言った。

｢あ、沖田隊長、チョッキのボタン取れかけてますよ。

縫っときましょうか？｣

[チョッキ]って…

今どき[チョッキ]はナイだろう。

久し振りに聞いたぞ、その表現。

俺の着てるこれ、[チョッキ]じゃなくて[ベスト]だから。

・―・―・―・―・―・

一体アイツは年いくつだ？

よくお上連中のお眼鏡にかなったなァ。

食堂を出て廊下を歩いていると、あのオバサンを含めた女子隊士達が縁側でひなたぼっこしていた。

おそらく若い女子隊士が｢アイドルの[過通運]ステキ！｣とか言ってる側で、アイツは｢え～、私は[たのきん]だなぁ｣とか言ってるに違いねェ。

あんなのに捕まったら大変だ。

早く部屋にずらかろうっと。

そう思い、後ろを足早に去ろうとした瞬間…

｢待って、沖田隊長!!｣

と、奴が突然俺の足首を掴んだ。

当然俺は勢いよく顔からコケた。

｢何しやがんでィ、てめェ!!｣

廊下に打ち付けた顔をさすりながら起き上がると、オバサンが俺の股関を指差し、大声で言った。

｢やぁだぁ～沖田隊長ったら、社会の窓開きっぱなしぃ～！

チャック全開ですよぉ～!!｣

オバサンは指差したまま、けたたましく笑い転げた。

確認すると、確かに開いていた。

さっきトイレに行った時に閉め忘れたのか。

しかし今どき[社会の窓]とか[チャック]って…古風だな、オイ。

しかもそれを人前で大声で言うなよ。

俺も恥ずかしいけど、恥ずかしくないのか、お前は！

あ、やっぱオバサンだから恥ずかしくないのか。

・―・―・―・―・―・

夕方。

終業時間間際に、近藤さんと華蓮さんが向かい合って溜め息をついていた。

｢どうしたんですかィ？｣

二人の間に割り込むと、華蓮さんが困り顔で言った。

｢今ね、新人女子隊士が辞表を出して、いきなり辞めちゃったの。

『思った以上に訓練がキツくて、今後ついていけそうにない』

だって…。｣

手には【平成元年１月…】と書かれた履歴書があった。

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