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《完結》負けない!!負け犬【１】～２０代後半・真選組女子隊長の日記～

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[25]３月１日

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屯所裏にようやく女子寮が完成し、私も入居する事になった。

住み慣れたアパートを引き払い、寮で暮らすのは自由を奪われるようで面倒だが、女子隊士だけここに放り込んで自分だけ呑気に独り暮らし…というわけにもいかず、仕方なく入居する。

陽当たりも良く、街の真ん中にある立地条件最高のこの寮は、各個人に一人部屋が与えられる事になっている。

寮とはいえ大人の集団なのだから、あえて門限は設けない事にした。

各々プライベートも楽しみたいだろうしね。

ただし部外者及び男子禁制。

つまり

『何かしたいならどっかよそでやれ』

ってこった。

…私個人のひがみじゃないよ。

いや、ホント。

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パンダのマークの引っ越し屋さんに荷物を運んでもらい、とりあえず家移りは終わり。

さて、段ボールの中身を片付けなくちゃ。
これが大変なんだよね…

…プルルルルル…

ケータイが鳴っている。

着メロではなくプルルル…の時は、知らない番号からかかっているって事だ。

誰だ？この忙しい時に。

なかなか鳴り止まないので一応電話に出てみる。

｢…もしもし。｣

｢もしもし。華蓮？俺だけど。

良かった～！昔と番号変わってなくて。｣

なーんだ銀時か。

ビックリしたなぁ、もぅ。

｢実はさ、ちょっと頼みがあるんだよ…｣

｢お金は貸さないわよ。｣

｢あぁ～それは残念…
って違～う！！

それがさ、うちで面倒みてる神楽っていうガキがさぁ、その…えっと…つまりその…｣

あぁ、例の夜兎族のチャイナ服の女の子ね。

よくうちの屯所の前をでっかい犬に乗って散歩してるわ。

私になついて、時々おいしい酢昆布くれるのよね。

｢…とにかく血が出てるんだよ。

俺じゃどうにも出来ないから、その…元看護師のお前に…えぇっと…｣

血が出てる！？

それにしてもいつもおおらかに構えている銀時にしては珍しく慌ててるけど、そんなに大量出血なのかしら？

｢どこから出血してるの？
意識はあるの？
いつから…｣

｢いや、ケガとかじゃなくて、あ～…え～…
女の子の…お赤飯的な…その…アレらしいんだよ。｣

お赤飯…

あぁ、初潮を迎えたのか！

そりゃ銀時にはどうしようもないわね。

慌てるのも無理ないわ。

｢分かった。

すぐ要る物を買い揃えてそっちへむかうわ。

…コラ、うろたえない！！

あんたがオロオロしてどうするの。

…保護者でしょ。｣

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生理用品一揃えと、餅米と小豆と黒ゴマと鯛を購入し、神楽ちゃんの元へと急ぐ。

銀時から教えられた道を行くと、[万事屋]の看板が見えた。

｢こんにちは～。
神楽ちゃ～ん、大丈夫？

お邪魔しまーす…｣

奥の部屋に入ると、

｢いやぁ！！
私死ぬね。

こんなに血ィいっぱい出てるから絶対死ぬアルね。

わあぁん！！｣

と押し入れから泣き声がする。
その前で銀時と眼鏡の男の子がオロオロしている。

｢あ、銀さん、来てくれましたよ！！

あなたが華蓮さんですよね。

僕、志村新八と申します。ここでバイトさせてもらってて…｣

｢そんな悠長に自己紹介してる場合か！！

おい華蓮、困ってたんだよ。
この通り、神楽が押し入れに引きこもっちゃってさぁ。

頼んだぞ、女子隊長！！｣

眼鏡の新八君を遮るように銀時が焦って話し出す。

月経で出血して死ぬと思い込んでるなんて…

月経の知識も無いまま、一人でよその星に来ちゃったんだね、神楽ちゃん。

そうか

かわいそうに

心細かったよね…

とりあえず銀時達を部屋から追い出し、二人きりになった事を確認し、押し入れに話し掛ける。

｢私よ、真選組の山田華蓮よ。分かる？

大丈夫よ、神楽ちゃん。

それは病気じゃないの。
【大人の女性になった】っていう証拠なの。

女性はみんなそうなるもんなのよ。｣

｢……｣

｢出てらっしゃい。
どうすればいいか教えてあげるから。｣

押し入れがスーッと開き、そこには目を赤く腫らした神楽ちゃんがいた。

｢助けて、華蓮ちゃん…｣

いつもは力強く頑張っている神楽ちゃんだけど、まだまだ幼く頼りない。

そんな彼女をそっと抱き締めた。

｢大人の女性の仲間入り、おめでとう。

今夜はお赤飯いっぱい炊いて、みんなでお祝いしようね。｣

｢……ありがとうネ、華蓮ちゃん。

なんか華蓮ちゃん、温かくて、私のﾏﾐｨみたいアル……。｣

・―・―・―・―・―・

大量のお赤飯を炊いて、鯛のお刺身とアラのお吸い物を付けて四人でお祝いした。

神楽ちゃんは照れくさそうにうつ向いている。

・―・―・―・―・―・

神楽ちゃんと新八君はお腹いっぱいになってソファーの上に寝てしまった。

｢腹いっぱいになったら眠くなるって、てめぇら赤ん坊かぁ！！
ったくぅ…。｣

ブツブツと文句を言いながら、銀時は押し入れに神楽ちゃんを、畳の部屋に新八君を抱き抱えて寝かせに行った。

後片付けも終わり、銀時と私はソファーで向かい合い、食後のコーヒーを飲む。

銀時は砂糖とミルクをドバドバ入れている。相変わらず激甘党なんだな。

｢お前、ミルクは無しで、砂糖は一杯だけしか入れないんだよな。｣

そんなくだらない事覚えててくれてたんだ。

何でもない事なのに、少しだけ嬉しい。

独り言をつぶやくように、彼が話し始めた。

｢昼間さ、お前に電話した時、

『コラ、うろたえない！！保護者でしょ。』

って言われただろ。

俺、正直ビビった。

そういえば、神楽や新八みたいな未成年のガキを面倒みてるって事は、やっぱ俺は【保護者】っつー事なんだなって今更ながら気付かされちゃってさ…

そしたら急に自分に自信失っちまって…。

俺に【お父さん】なんか出来ねーよ、無理だよって…。

でも…

【お母さん】も一緒にいてくれたら、俺…｣

｢さてと。
私、帰るわ。

明日も仕事だから。

じゃあね。｣

銀時の言おうとした事が何なのか分かっていた。

分かっていたからそれ以上聞かなかった。

この関係を維持したいから、しなくちゃいけないから…。

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