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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[113]７月３日(華蓮)

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｢そうか。もうじきだもんな、出産。

だから気合い入れる為にやっちゃったんだ、その頭。

ぷくくく…｣

局長は、涙を湛えながら笑いを堪えている。

そう、私のアフロヘアーを見て、だ。

｢いや、でもかわいいカワイイ。

アーノルド坊やみたいで…

ぶははははっっっ！！｣

アーノルド坊やって…

二十年以上も昔に流行った、ダンスの上手いアメリカ人の子供でしょ？

もうそんなの分かる人って、真選組(うち)じゃあアンタと私と土方さんくらいのもんよ。

呆れる私をよそに、局長は畳の上でヒィヒィ笑い転げている。

あ～しかし何だろな。

今朝からやたら腰がダルい…。

―・―・―・―・―・―

…ダメだ。もう何か仕事どころじゃない。

尋常じゃなく腰がダルくて痛い。

早めにうち帰って寝よう。

こないだおしるし(出産数日前にある出血)も来たから、いつお産が来てもおかしくないからね。

体調管理に気を付けなきゃ。

私は局長に早退を申し出ようと、重い腹をさすりながら、机から立ち上がった。

その時だった…

｢！！！｣

私の座っていた座布団は水浸しになっており、股からはポタポタと水が滴り落ちていた。

｢…破水…した…。｣

そう、この水はまさにお腹の中の羊水。

今朝からの腰痛とダルさは、前駆陣痛(陣痛の前フリ)だったらしい。

ヤバイ！このままでは本格的な陣痛が始まってしまう。

しかしこの場から動こうとすれば、羊水はどんどん溢れ、胎児を危険にさらす事になる。

とりあえず…

｢お願い、誰か来てーー！！｣

・―・―・―・―・―・

｢局長！

１１９番に通報したのですが、繁華街で大きな火災が発生しており、救急車が全て出払っているそうです！！｣

｢何、じゃあこっちには救急車を回せないってか！？

クッソー、参ったなぁ…｣

ついに５分間隔で本格的な陣痛がやって来た私は、女子隊長室の布団の上で苦しんでいた。

周囲では、隊士達が救急車を手配したり、銀時に連絡を取ったりと、忙しくしている。

｢華蓮さん、もうすぐ万事屋のダンナが来てくれやすぜィ。

『今日はスピード違反切符は切らない』っつっときましたから、バイクかっ飛ばしてんじゃないですかねィ。｣

総悟君は私の苦しむ姿を直視する事なく、襖を閉めた。

私は頷くのが精一杯で、答える事が出来なかった。

陣痛の間隔が狭まってきた。

いよいよマズイ。

たぶんこの感じでは、今救急車に乗ったとしても、病院に到着する頃には赤ん坊はとうに出てしまっているだろう。

｢うぐぅ…ぐ…うぅぅ…｣

数分おきに迫って来る痛みと苦しみに、ラマーズ呼吸法で応戦する。

ヒッヒッフー

のアレだ。

これでその都度いきみを逃すが、また次の波がやって来る。

｢うぐぐァァ…銀…と…きィ…｣

握り締めるシーツが、ギシギシと破れそうな音を立てる。

陣痛はついにピークを迎え、数秒おきにやって来るようになった。

もうダメだ。

私は側で見守る女子隊士のサツキに、廊下で待つ局長を呼ぶよう指示した。

しばらくすると、青い顔でオロオロとうろたえながら局長が入ってきた。

｢ど…どうしたらいいのかな…えっと、えっと…

だ、大丈夫かい、華蓮さん？｣

初めての経験にひどく狼狽し、目が宙を泳いでいる。

｢局長、私、腹くくります。

私…

ここで産みます。｣

｢えっ！ここで！？

しかしお産婆さんもいないのに、そんな無茶な…｣

私は自分の汗だくになった顔を指差し、微笑んで見せた。

｢私、助産婦の資格持ってます。｣

局長はいかつい巨体をヘナヘナと畳に下ろし、安堵の表情を浮かべた。

その時、私の股の間に、違和感を感じた。

そっと手を添わせてみると、何やらかたいものがのぞいているではないか。

｢あ…ヤバイ。

頭、覗いてる！！｣

｢ええェェェ～～！？｣

その場にいた一同はビックリし、局長などは慌てふためいて部屋を飛び出した。

それと同時に、髪も衣服も振り乱した銀時が、襖を勢いよく開けて走り込んで来た。

｢華蓮！
赤ん坊は無事か！？｣

｢や…もう頭が半分出かかって…んの…ウゥッ！！｣

｢何！？

ちょっとお前、見せてみろ！｣

そう言うなり、銀時は私の股をガバリと開いた。

｢キャアァァー！何やってんですか、旦那さん！！｣

側にいたサツキが悲鳴を上げた。

｢うっせーな、コノヤロー！

俺は嫁さんの股ぐらいしょっちゅう見てんだ、バカヤロー。

今更珍しくもねーっつの！！

どれどれ…｣

銀時はしげしげと私の股を眺め、後ろに飛び退いた。

｢ほ…ホントだ！

もう頭出てた！！

ヤベェ、ヤベェよ。本格的にヤベェよ。｣

そうこうしているうちに、私はかなりの大きな痛みに見舞われてきた。

｢ぎ…ぎぎ…銀時ィ…

出る。完全に出るわ、コレ！

いい？良く聞いて。

サツキは大量のお湯とタオルを用意して。

そして銀時は…ウゥゥ…

赤ちゃんの頭を持って…回転させながら…

引っ張りだして！｣

｢お…俺がァァァ！？｣

突然の指示に驚きを隠せない様子の二人だったが、急を要する事態と悟り、早速取り掛かってくれた。

銀時は私の股の間に座り、緊張した面持ちでスタンバイしている。

｢いい？

私が合図したら、すぐに引っ張ってね。

それじゃあ、いくよ…｣

｢よ…よし来ーい、コノヤロー！！｣

｢じゃあいくよ！

フーの…

フーの…

ウゥゥーーーン！！！

今よ、銀時ィィィ！！！｣

｢ふんぬゥゥゥーーーーー！！！｣

この長い人生の中で一度も味わった事のない大きな痛みが、私の身体中を走り抜ける。

人とも獣ともつかないような雄叫びを上げた瞬間、固い異物は私から抜け出し、産声を上げた。

｢……生まれた……｣

銀時が、溜め息と共に呟いた。

｢お…おめでとうございます、隊長！

男の子です！！｣

大仕事を終えた脱力感の中、瞼をそっと開くと、ヘソの緒を切ったばかりでまだ血にまみれたままの赤ん坊を抱いた銀時が目に入った。

赤ん坊はギャアギャアと元気な産声を上げている。

それを抱き締める逞しい腕には、ポタリポタリと大粒の涙が滴り落ちていた。

｢…ありがとう。

俺の子供を産んでくれて…

俺を親父にしてくれて…

本当にありがとう、華蓮。｣

彼のこの言葉で、痛みも辛さも全てが吹き飛んだ。

私は愛する人の為に、命懸けで宝物を産んだ。

そして彼はそれを心から喜んでくれた。

私にとって、これ以上の喜びはない。

彼は腕の中の血だらけの赤ん坊に、愛しそうに頬擦りした。

｢元気に生まれて来てくれて、ありがとう。

…坂田金太郎！！｣

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負けない!!負け犬２～かぶき町のみんなの日記～

☆★☆★おしまい☆★☆★
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