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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[111]６月１７日(神楽)

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｢雨、なかなか止まないネ。｣

｢あぁ。止まねェな。
梅雨だしな。｣

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やっと取れた総悟の休日。

珍しく、総悟の方から｢どこかに行こう｣って言ってくれたのに…

それなのに…

｢この大雨じゃあ、どこにも行けやしねェや。｣

結局、いつもの公園のあずまやの下で雨宿り。

空を覆う厚い雲と、滴る雨を眺める事しか出来ない私と総悟。

｢…つまんないアル。｣

うなだれてベンチに座り込むと、総悟も隣に座り、呟いた。

｢あぁ、つまんねェよ。

せっかくの非番なのに、お日サンも、

神楽の笑顔も拝めねェなんて…

本ッッッ当、つまんねェや。｣

そう言い放っておいてから、総悟は赤い顔をしてまた空を見上げた。

｢なァ、どうやったら拝める？｣

たぶん、普段なかなか優しい言葉なんて口にしないヤツにしてみれば、これは精一杯の甘い台詞なんだと思う。

だからアタシも思い切り、心の言葉をぶつけた。

｢『総悟のものになった』

…って実感したら、見られるかもネ。｣

大地に降り注ぐ雨の音だけが、二人を包む。

言ってしまったアタシも、言われた総悟も、どうしていいか分からず口をつぐんだまま、真っ黒な雲を見つめ続ける。

すると、アタシの手に温かな体温を感じた。

｢…本気でなるつもりですかィ？

俺のものに。｣

その声の方を向くと、空に注がれていたはずの瞳は、アタシの瞳を捕えていた。

｢本気で俺のものになるつもりですかィ？｣

再度確かめるように言いながら、総悟の顔はもう目の前にあった。

雨音と、総悟の唇の温度だけがアタシを包む。

アタシ達はベンチの上に寝そべり、会えない時間を埋め尽くすかのような口づけに耽った。

このまま、ついにアタシは『総悟のもの』になるんだ…

思わず総悟の手を握り返した、その時…

｢ちょっとちょっと～、お二人サ～ン。

【うち】で何してくれちゃってんのォ～！？｣

突然のオッサンの登場に驚き、アタシ達は危うくベンチから転げ落ちそうになった。

｢ここはオレんち！

毎日ココで、寝起きしてんの、ココで。｣

そこにいたのは、段ボール箱を抱え、小汚ない雑種犬を連れたマダオだった。

｢こないだ借りてたマンション、やっぱ何か出るわ、ウン。

オレ、毎晩金縛り食らっちゃってさぁ。お陰で寝不足のせいで失敗続きでバイトもクビになっちゃって。だからもうあのマンション、引き払ったのよ。

そんで今はココがオレんちなんだよね。

すまないがそーいうの、よそでやってもらえるかな？｣

ベンチの上で折り重なるアタシ達に、マダオは悪びれる様子もなく言った。

アタシ達の心の内を代弁するかのように、空に雷鳴が轟いた。

だからお前は【マダオ】(まるでダメなオッサン)なんだよ！！

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