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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[109]５月２６日(銀時)

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今朝、華蓮の足がつった。

最近しょっちゅうだ。

例のサンタのオッサンに貰った育児書にも、

『妊娠後期の妊婦さんの筋肉はお腹の重さを日々支えている為、その疲労により、脚部や鼠径部が時折つる事があります』

って書いてあったから、それだろう。

｢ヒィィィ～～～！

たっ…助けて、銀時ィィィ～～～!!｣

俺は床でのたうちまわる華蓮の足裏を、丁寧にマッサージしてやった。

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いつもかみさんが世話になる産婦人科前を通りすがった。

一階は外来で、二階以上が病棟となっている。

いずれここで、俺の子供が誕生する。

二階の窓を見上げながら、まだ見ぬ赤ん坊への期待と、ズシリと重い責任を感じる。

｢俺の、子供…｣

そう呟いた時、外来のドアが開いた。

目をやると、そこから見覚えのある女が腹をさすりながら出て来た。

アレ、あいつ確か…

[ヤツ]の部下じゃねぇか？

[来島また子]とかいうおかしな名前の。

彼女はうつ向いたまま一人で通りを歩き、しばらく行った曲がり角で立ち止まった。

そこには

[ヤツ]がいた。

俺はその昔馴染みの[ヤツ]の姿を目にし、不快な気分に見舞われた。

今までの[攘夷活動]という名の数々の暴挙を思い出し、はらわたが煮えくり返る。

｢おぉ、銀時じゃないか。

こんなとこで会うたぁ奇遇だねぇ。

クックックッ…｣

[ヤツ]…そう、高杉晋助は、例によってあの狂気に満ちた含み笑いをした。

｢お前んとこの、何てったっけな…[幕府の犬]、アイツも孕んでるそうだな。｣

高杉はまた子を引き寄せ、肩を抱いた。

腕の中のまた子は、嬉しそうに頬を染めている。

アレ、コイツそういえばさっき、｢アイツ[も]｣って言ったよな？

もしかして…

｢俺もどうやら二世の生産に成功したようでね。｣

やっぱり！

また子とデキてやがったのか、コイツ。

しかももうガキまで作ったってか。

俺の驚きをよそに、高杉は煙管を吹かして言った。

｢お前、自分のやってる事が矛盾してるって、気付いてるんだろう？｣

昔から変わる事のないあの鋭く冷たい眼差しが、俺の心を射た。

｢お前は攘夷志士時代、沢山の天人…いや、[命]を殺めてきた。

しかし今、お前は人の[命]を散々奪っておきながら、新たな[命]を世に産み出そうとしている。

そしてお前の事だ、ソイツの事を溺愛し、大切に育てていくのだろう。

お前にとって、[命]とは何だ？

[斬り捨てるもの]か？

それとも[産み出すもの]か？｣

俺の過ちをえぐるかのような高杉の問いに、正直答えに窮した。

高杉の言っている事は、的を獲ている。

その通りだ。

俺は数え切れない程の[命]を奪ってきた。

《天人から国を護る》という大義名分の元であったとはいえ、[命]を奪った事には変わりない。

しかし、俺はそんな血で血を洗うような生活に疑問が生じ、攘夷活動からは足を洗った。

[命]の尊さ、重さ、儚さを悟ったからだ。

そして今、新たな[命]にその尊さを教え、育てようとしている。

それは法的には許されても、人道上では許されないのか？

おそらく狂った攘夷思想の持ち主であるヤツには、こんなマトモな社会論など耳には入らんだろう。

俺は逆に、ヤツに聞いてやった。

｢お前はどうなんだよ。

お前も俺と共に戦ってきたじゃねぇか。

それどころかお前は、開国後もお構いなしにどんどん人斬ってやがる。

それでガキ作ったって…

俺と同罪かそれ以上じゃねぇか。

自分の事だけ棚に上げてんじゃねーよ、コノヤロー。｣

すると高杉は、俺などが予測もしなかった、残酷かつ冷徹な返答をした。

｢俺はお前と違って、[愛玩動物]を作ったんじゃない。

我が鬼兵隊の[戦闘員]を増員しただけだ。

また子は、俺の為なら何でもすると俺にすがった。

だから俺はまた子を抱き、[戦闘員]を作らせた。

そしてこれから、優秀な[戦闘員]として攘夷思想教育を施し、俺の悲願である[世界破壊]を成就させる。

…松陽先生を奪ったこの世界をぶっ潰してやるのさ。

クックックッ…ク～ックックッ！！｣

胸に抱かれるまた子は、何の疑いも持たない純粋な瞳でヤツをうっとり眺めている。

自分の宿した赤ん坊を[戦闘員]と呼ばれている事に、誇りを持っているかのようだ。

俺はヤツとは違う。

俺は生涯、赤ん坊と嫁さんを愛し、護る。

かつて俺が国を護ったように。

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