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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[108]５月７日(土方)

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市中見廻り中に喉が渇いた俺は、しばらく行った先にある自販機に向かった。

投入口から１２０円を入れ、スポーツドリンクのボタンを押す。

下から出て来た青い缶を取り出し、プルタブを開いたところで、自販機の陰から立ち上る煙に気が付いた。

冷えたスポドリを口に含みながら回り込んで見ると、足元には日本古来から伝わるタイプのヤンキーが二人いた。

口には軽いメンソールタバコ、頭は金のリーゼント、服装は短ランと長ラン。

ヤンキーの基本に忠実な、あまり面白くないタイプのヤンキーだ。

こういうヤツらは、族にいても決してアタマになる事などはない。

下っ端のまま引退の年齢になり、いつの間にか元レディースの女とデキちゃった結婚して、ガキの運動会でやたら張り切る良いパパになるというコースが目に浮かぶ。

しかし見てしまったからには、ケーサツのオニイサンとしては声を掛ける義務がある。

面倒だがそれが我ら真選組の仕事だ。

俺はしゃがんでヤツらの顔を覗き込んだ。

｢おぅおぅ。世間様が愛煙家に厳しいこの御時世に、お前らい～いモン吸ってんじゃねーかコノヤロー。｣

するとヤツらはくわえていたタバコを靴で揉み消し、俺にメンチ切って来やがった。

｢…んだよォ、オッサン。
なんか文句あんのか、アァン!?｣

俺は胸ポケットから警察手帳を覗かせて見せた。

すると下っ端ヤンキー達は口をつぐんだ。

｢お前らさァ、どーせやるなら徹底してやれって。｣

俺はそう言いながら、ヤツらの短ランの裾をめくってみた。

思った通りだ。裏地を見たが、やはり無地。

｢裏地は総刺繍にしとかなきゃダメだって。｣

次に金のネックレスを手に取った。

｢これだってメッキだろ？

やたらピカピカ光ってて不自然だ。

やっぱ２４金くらいは付けなきゃハクつかねぇだろ。｣

肩を持ち、後ろを向かせ、ズボンの腰あたりを指差す。

｢あ～ぁ、ダメだこりゃ。

ベルトから上は、最低でも１０センチはみ出してないと。

そして後ろには切り込み。ジョーシキだろうが。

あ～ぁ～、額もそのまんまじゃねぇか。

思いっきり鬼剃りにしろって。｣

ヤンキー達は自慢の一張羅を次々と指摘される様子に、呆気に取られている。

｢今俺が教えてやった事は、あくまで族の隊長レベルまでのジョーシキだ。

これより上…

そう、総長レベルにまで昇り詰めようとすれば、もっともっと手を加えなければならない。

つまり、そんだけ金もかかるってワケだ。な、分かんだろ。

今のお前らのまんまで【十代道】や【王道】の表紙を飾るだけの自信はあるか？

お前らにアタマ張るだけのヤル気と勇気と金銭的余裕はあるのか？｣

俺の真剣な問いかけに、彼らは黙ってうつ向いてしまった。

｢な？無理だろ。

だったらホレ、逆にそんなヤツらを捕まえるってのはどうだ!?

かっけぇゾ～、ケーサツは。

パトや白バイ乗り回して、気に入らないヤツ見つけりゃ殴って、斬って、取っ捕まえる。

もォ楽しくって辞めらんねぇぞ！

な、だからお前らも今日から剣の腕を磨け！

そして来年ニ月の[真選組入隊試験]を受けに来い!!

待っててやっからよ。｣

ヤツらはさっきの濁った瞳から一転、キラキラと澄んだ目で俺を見つめた。

…ヤンキーは単細胞で、ホント扱い易い生き物だ。

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