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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[106]４月２０日(沖田)

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屯所の玄関で、拾い物をした。

｢何ですかィ、これは？｣

拾ったのは一枚の紙。

それは何故かいまどき白黒写真で、真ん中の塊の周りを包み込むように、渦を巻いた波紋が見える。

だがどういう訳かその写真からはある種のオーラのようなものが放たれているようで、強いパワーを感じる。

｢…これは一体…？｣

上がりかまちに腰掛けてそれを眺めていると、後ろからパシッと頭を叩かれた。

｢あ痛っっ!!いきなり誰でィ!?｣

叩かれた部分に手をやりながら振り向くと、くわえタバコの土方がいた。

｢後ろを取られるとは[士道不覚悟]だな、総悟。｣

そういつものように悪態をつきながら、土方は俺の隣に座り、写真を奪った。

｢何見てんだよ…何コレ？｣

土方は首を傾げて俺に問う。

しかし当の俺にもわからないので、答えようがない。

｢新進気鋭のアーティストの新作か何かか？｣

奴は縦に横にと方向を変えながら眺めて言った。

｢お、何だ。

二人して並んで、珍しいじゃないか。｣

俺と土方の肩を叩く、大きくて肉厚な手。

近藤さんだ。

｢何見てんの？俺にも見せて見せて！｣

今度は近藤さんが写真を横取りした。

｢何コレ？

なんか白黒で怖い感じするな。

…あ、もしかしてアレか!?よく子供達がやってる、【遊戯王カード】か!?

あれって子供の玩具のわりには怖い絵柄ばっかじゃん。｣

さすがにお寺の孤児達の父親代わりを務めるだけあって、子供の間の流行り事には敏感だ。

しかし残念ながらこれは【遊戯王】ではない。

あれはカラーだし、それに紙のサイズが明らかに違う。

ではこれは一体…

｢あ、あったあった！｣

後ろから早足で廊下を駆ける音がした。

三人で同時に振り向くと、大きなお腹をせり出し、反り返りながらやって来る華蓮さんの姿があった。

｢あ～こんなところに落ちてたのね。

拾ってくれてありがとう！｣

華蓮さんは、近藤さんの手中にある写真を手に取った。

｢ソレ、華蓮さんのだったんですかィ？

一体何なんですか、それに写ってるモンは。｣

大事そうに胸ポケットにしまう華蓮さんに訊ねると、彼女はニッコリと微笑んで俺の手を握った。

｢それはね…｣

そう言いながら、俺の手をそっと腹に当てた。

ぐにゅりっ！

｢わっ!!｣

手に伝わって来た感触に驚き、思わず彼女の手を振り払った。

何かが動いた。固いもの…

｢その写真はね、お腹の赤ちゃんの写真なの。｣

華蓮さんはもう一度胸ポケットから写真を取り出し、説明をしてくれた。

｢この丸い塊が頭、その下から生えてるのが手足ね。

そして胴体部分に見える黒いものが心臓よ。｣

赤ん坊…

そうか。赤ん坊のエコー写真だったのか。

じゃあさっきの｢ぐにゅりっ｣は、赤ん坊が動いていたという事か！

説明された写真を再確認する。

ウン、確かにこれは人間の形だ。

横向きの顔が見える。

そして手は、口に加えておしゃぶりしている！

赤ん坊って、腹ん中でもう既に人間らしい事をし始めているんだな。

…アレ、何だろう？

華蓮さんの大きなお腹がただの膨らみではなく、[命を携えている袋]なんだと実感したせいだろうか。

…目頭が熱い。

増水する瞳の水分で前が朧気になりながらも、その[命の証明]を見たくてもう一度写真を覗き込んだ。

すると、俺の目の中に何やら怪しい影が見えた。

｢あっ！華蓮さん、コレもしかして…!!｣

俺の声に釣られて皆が写真を覗き込む中、俺は人差し指で写真下部をさした。

｢…股に突起物が見えるんですけど…もしかしてコレって……!?｣

そこにいた皆、息を飲んだ。

どうやらコイツ、男の子らしい!!

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