†*†*†*†*†*†*†*†*

《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

†*†*†*†*†*†*†*†*

[102]３月２７日(華蓮)

†*†*†*†*†*†*†*†*

通勤途中、不思議な言葉に出会った。

寺子屋へ向かう子供達は、

｢うちのクラスの先生って、最近【華蓮ってる】よね～。｣

とおしゃべりしながら歩いていた。

高校生の男の子達は、

｢やめとけって、あの女はは。

なんか【華蓮ってる】し。｣

と自転車で走り去った。

女子高生は、

｢…でェ～、タカシがァ～、浮気したからァ～、超ムカついちゃってェ～。でもアタシィ～、結局また【華蓮っちゃった】んだよねェ～。｣

とケータイで話している。

｢【華蓮ってる】…？

何だろうね、定春。｣

私を乗せて歩く定春に話しかけてみるが、首を傾げるばかり。

【華蓮ってる】…

その言葉を反復し続けるうちに、屯所へ着いた。

・―・―・―・―・―・

｢ねェ、ザキ。

【華蓮ってる】って言葉、知ってる？｣

たまたま廊下ですれ違ったザキを捕まえ、聞いてみる。

やはり流行語は若い隊士に聞くに限る。

するとザキはそれまでの穏やかな顔から一変し、表情を強張らせた。

｢どしたの、ザキ？

ねェってば。【華蓮ってる】って流行ってんの？｣

うつむき気味のザキの顔を覗き込んで再度問うと、彼は私から目をそらすようにしてダッシュで逃げ出した。

｢あっ、ザキ…!!｣

呼び止めたが、振り向きもせず走り去ってしまった。

変なの。厠にでも行きたかったのかしら。

しかし【華蓮ってる】って、【華蓮】と付くからにはやはり私の事を言ってるわけよね？

元大江戸小町だったから[美人だ]とかいう意味？

それとも身長が１７０センチあるから[背が高い]？

う～ん…

疑問の晴れないまま私は自室に入り、ノートパソコンを広げた。

分からない事はネットで調べてみよう。

私は[華蓮ってる]と打ち込み、検索エンジンにかけた。

すると[現代人用語辞典]というサイトにヒットした。

｢お、これこれ！｣

ページを開き、【華蓮ってる】の項目をクリックしてみる。

すると思いもよらなかった意味がズラズラと羅列されていた。

｢えっ、えっ…ちょっとヤダ、何コレ…!!｣

私は我が目を疑った。

そこには…

◎【華蓮ってる】

……[華蓮]とは、特別武装警察真選組女子隊長坂田華蓮女史を指す。
[…ってる]が付くと、[キャリアウーマン]、[すぐ武力行使する女性]、[ダメ男と離れられない女性]という意味になる。

と、あった…。

・―・―・―・―・―・

ショック…

[やたらキャリアのある、暴力的なヒモ女]…

私って、世間様からそんなイメージで見られてたんだ。

いや、あながち間違いではないのかもしれない。

ヒラ看護師を経て病棟副主任まで務め、現在では真選組女子隊長だし、

朝、銀時に｢起きなさい｣を三回言っても起きなかったらヘッドバットの刑だし、

旦那より収入も多いし…

でも自分で言うのと違って、他人からそう言われているかと思うとちょっと腹立たしい。

｢フン、何よ何よ。

みんなして私をバカにしてさ。｣

不貞腐れながら、遅めの昼食を摂るため食堂に入る。

テーブルには私の分のうどんが放置してあり、冷えている上に水分を含んでブクブクに膨れあがっていた。

｢会議が長引かなければ、アツアツ、ツルツルのおうどんが食べられたのにな…。｣

先程の【華蓮ってる】の言葉と冷えたうどんをすする音が相まって、切なさを助長させる。

｢あ～ぁ、やだやだ。

一人淋しくテレビでも観ますか。｣

誰もいない食堂で一人言を呟きながら、リモコンを手に取り、大画面テレビのスイッチを入れた。

すると、毎日午後２時から放送している情報番組、[江戸っチャオ！]が映し出された。

｢もうこんな時間だったのか…｣

ズルズルとすする事もままならないくらいに膨れあがったうどんを噛みきりながら、画面に注目した。

すると、司会者が次のコーナーの特集内容を口にした。

『今日は、江戸の若者の間で流行している【華蓮ってる】という言葉に着目してみました。』

｢うゎ、マジでか！｣

私は箸を置き、思わずテレビの側まで歩み寄った。

レポーターがあちこちの若者にインタビューし、【華蓮ってる】の意味や用途を聞いて回っているが、やはり先程ネットで調べたものとほぼ同じである。

｢やっぱりそうなのか…｣

事実を改めて目の当たりにし、更なるショックをお見舞いされてしまった。

｢私、もう外歩きたくない…。｣

あまりの悲しさに、床にへたり込んだその時である。

『我々は、この【華蓮ってる】の生みの親、Ｏ氏とコンタクトを取る事に成功しました。

それではＶＴＲをどうぞ！』

生みの親だとォォォ!?

誰だ!?誰なんだ!?私を扱き下ろして喜んでる輩はァァァ!?!?

早く出せェェェ～～!!

すると画面に、首から下だけの青年の姿が映し出された。

あれ？この黒い上着に白いスカーフ、そして…

『あぁ、確かに俺が【華蓮ってる】の生みの親ですゼィ。』

この独特な江戸っ子口調!!

これは間違いなく…

『いやぁ～、まさか俺の中だけのブームのはずが、江戸中に広まっちまうとは夢にも思いやせんでしたゼィ。』

総悟君んんん!?

『しかも、本来の使用法とまるで違う使い方で広まるたァ、心外でさァ。』

えっ、違う使い方？

『みんな[暴力的]とか[キャリアウーマン]とか[ヒモ女]っていう意味で使ってんでしょ？

俺が言う本来の意味は、[胸が無い]ですゼィ。』

貴様ァァァ～～…

後で会ったら、ボッコボコに【華蓮って】やるぜ…!!

†*†*†*†*†*†*†*†*
[前㌻] [次㌻] ［*］ﾎﾞﾀﾝで前㌻
［#］ﾎﾞﾀﾝで次㌻ †*†*†*†*†*†*†*†*
[←戻る] †*†*†*†*†*†*†*†*
†*†*†*†*†*†*†*†*