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《完結》負けない!!負け犬【２】～みんなの日記～

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[100]３月１３日( 〃 )

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雨の日は湿気の多さに天パがうねりを増すのでイラつく。

その上、洗濯物を部屋干しするので部屋が臭い、余計イラつく。

そんな日に限って…

｢おーい銀時、いるか？

邪魔をするぞ。｣

また来た。

イラつきをＭＡＸにさせる天才。招かれざる客。

｢おぅ、ヅラか。

勝手に入れ。｣

｢ヅラじゃない、桂だ。｣

奴は玄関からリビングに入ると、きれいなストレートのロングヘアーを俺の目の前で嫌みのように拭いた。

｢雨でビショビショにしてしまったな、エリザベス。
すまない…。｣

続いて、自前のバスタオルでペットの宇宙生物・エリザベスをふきふきしてやると、プラカードで

『恩にきる』

と答えていた。

得体の知れない生き物とプラカードで会話…なんという気色の悪い関係なんだろう。

エリザベスの巨体を拭き終えたヅラは、丁寧にバスタオルをたたみ、うちのリビングのある一角を見つめた。

そして顔をしかめてこう言った。

｢銀時、お前は最近母上と住んでいるのか？｣

俺とは古い付き合いだ。

だから俺が孤児である事などとうの昔に知っているはずだ。

なのにこの問いとはどういう事だ？

｢あの大きなパンツ…

あれはどう見ても母上のものだろう。｣

ヅラが指差したのは、室内に干してあった華蓮のマタニティパンツだった。

｢バカ、違うよ。

ありゃババァのじゃなくて、かみさんのマタニティ用のパンツ。

腹が冷えないように、ヘソまでスッポリ収まるように深く出来てんだよ。｣

つか、人んちの洗濯物ジロジロ見んな！

｢お、銀時。

さてはお前またヤンチャやったな？

あんなに太くて長い包帯を使ったとは…

やはりまた攘夷志士時代の血が騒いだのだろう？

フハハハ…｣

次にヅラが見つけたのは、腹帯だった。

｢違うって！

ありゃかみさんの腹帯だよ。

あれ巻いて腹冷えんの防いだり、腰の負担を軽減したり、赤ん坊の太りすぎを予防したりすんの。｣

本当にモノを知らない奴だ。

いちいち説明するのも面倒だが、勘違いされるのはもっと面倒なので逐一教えてやらなければならない。

雨降ってるだけでもイラつくってのに、コイツの禅問答並みのトークに付き合わされるなんて本っっっ当ダルい。

プールの後の５時間目くらいダルい。

｢なるほど。幕府のイヌ嫁用か。

だからここに犬の絵が入っているのだな。｣

奴が何気に腹帯の端を手に取った。

｢ダーーーッッッ触んなよ!!

仮にもそれは下着だぞ!!｣

ヅラの手から腹帯をもぎ取った。

恥部に当てるものではないとはいえやはり直接肌に使用する、ましてや赤ん坊が宿った神聖なる腹部に巻き付けるものだから、他人にベタベタ触らせたくない。

｢犬の絵はな、犬が多産で死産が少ないって事で縁起物なんだよ。

お前は本当にモノを知らねェな…ったく。｣

俺はヅラの触った部分をフーフーして、手でパンパンはたいた。

その姿を見たヅラは、汚いモノを見るかのような目で俺を一瞥した。

｢情けない。

我らが恩師、松陽先生の攘夷の教えを忘れ、幕府のイヌなんぞと婚姻を結んだかと思えば、挙げ句に子を作るとは…。

銀時、きさまにはあの[白夜叉]と呼ばれ、共に戦った日々の熱い思いはもう消え失せてしまったというのか？｣

｢……｣

確かに松陽先生には恩がある。

オヤジもお袋も、親類さえもいない孤児の俺をここまで育ててくれたのは先生だし、【侍の精神】を確立してくれたのも先生だ。

しかし時代と共に俺自身も、周りの環境も変わる。

それに逆らって生きて行けるほど、俺は強くない。

流されるままに流され、今こうしてここにいる。

だが先生に教わった【侍の精神】だけは失っちゃいねェ。

廃刀令で真剣から木刀に持ちかえても、【侍の精神】だけは俺の真ん中に今もしっかりと根付いている。

そしてその【侍の精神】の名に恥じぬよう、家族を護り、これから父親としての道を歩もうとしている。

だが猪のように一方向しか見えないこの男には、そんな俺の生き方など到底理解出来ないのだろう。

奴は今の俺を軽蔑している。

しかし昔の自分にすがって生きていても時代にそぐわず、結果生きて行く事さえ困難となるだろう。

天国の松陽先生だって、俺達にそんな事を望んじゃいねェはずだ。

俺は俺の【侍道】を生きる。

それが松陽先生の教えを受け継ぐ事であり、先生への恩返しだと思っている。

｢…雨、早く上がんねェかな。

股にキノコ生えちまうよ。｣

｢股にあるのはキノコではない。

アレはチ…｣

真面目一徹のヅラが言いかけたところで、エリザベスが蹴りを食らわし、プラカードを掲げた。

『言っちゃダメ』

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